<社説>経済安保法案 恣意的な運用避けねば

2022年4月8日 07時03分
 岸田政権が重視する経済安全保障推進法案が衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった。貿易を中心に経済分野での安全保障を強化する法案だが、国家の介入は企業活動を萎縮させかねない。施行後、政府には慎重な運用を求めたい。
 法案の柱は「供給網の強化」「基幹インフラの安全確保」「先端技術での官民協力推進」「特許の非公開」の四項目。中国やロシアとの取引を念頭に国が企業の経済活動を監視しながら物資の安定供給を図り、技術流出を防ぐのが狙いだ。
 目玉である「供給網の強化」では、国が指定した半導体や医薬品など「特定重要物資」の調達が監視対象となる。政府は指定品目の貿易に関わる企業への調査を原則として自由に実施できる。
 「基幹インフラ」は鉄道や電力、情報通信などが対象となる。安全保障上、脅威となる国の製品が事業に使われていないか導入時に事前審査が行われる。
 懸念されるのは規制品目の範囲など具体的な運用方法が明確に定められていない点だ。政府は政令や省令で順次定めていく方針だが、それでは時の政権の意向で恣意(しい)的な運用が可能となる。
 企業の取引先は経済合理性を優先して決められる。国が恣意的な介入を常態化させれば、企業側に無用な忖度(そんたく)が生まれ自由な貿易環境を失いかねない。
 同法案には違反した場合の罰則規定もあり、貿易全体が萎縮する恐れさえある。政府には中小企業を含む経済界全体と十分に意見交換するよう強く求めたい。詳細な運用モデルを提示し、実際の運用も極力抑制的に行うべきだ。運用をめぐっては国会でのチェックがより重要になる。
 経済安保という概念の背景に、米中対立の激化があることは否定できない。ハイテク分野での中国の著しい台頭を考慮すれば一定の警戒はやむを得ない。ただ覇権争いを繰り広げる米中と、日中では関係のあり方が大きく違う。
 日本の対外貿易の総額は二〇〇七年以降、中国が常にトップだ。大企業のみならず社運をかけて対中進出した中小企業も多い。コロナ後をにらみ観光分野での中国への期待も大きい。
 米国の戦略に漫然と追随するのでなく、日本の国益を優先させた独自の経済戦略を強く望みたい。

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