手まりに宿る優しさ、五感で堪能 北千住の「ふるさと愛」あふれる工房 魅力発信

2022年4月8日 07時05分

全国から集めた手まりが並ぶ「はれてまり工房」の佐藤裕佳館長=いずれも足立区で

 古くは玩具として親しまれ、今では美しい幾何学模様が施された伝統工芸品でもある手まり。結婚や女の子の誕生を祝う贈り物でもあるが、普段見る機会は少なくなった。足立区にある「はれてまり工房」は、「見て」「触って」、さらには「作って」「食べて」と、余すところなく手まりの魅力を伝えている。
 JR、東京メトロ千代田線の北千住駅から徒歩数分の「はれてまり工房」。天井からつるされた赤やオレンジの手まりが、温かみと“映(ば)える”空間を演出する。全国各地の豪華絢爛(けんらん)な手まりが並ぶ光景は、まるで博物館。月一回のワークショップで手まり作りを体験でき、国内外の職人が作った手まりのアクセサリーも購入できる。併設の「はれてまりカフェ」の看板メニューは、手まりをイメージした丸い器に入ったオリジナルプリン。五感をフルに使って手まりの魅力を堪能できるのが、この工房だ。

手まりをイメージした丸い器がかわいいカフェのプリン

 館長の佐藤裕佳(ゆか)さん(27)はブルーの小さな手まりのピアスを揺らしながら「てまりっこさん(手まりファン)を増やしたいんです」と笑顔で語る。その深い手まり愛は、ふるさとへの愛から生まれた。
 手まりの産地として有名な秋田県由利本荘市出身。身近に手まりはあったが幼いころはそれほど興味はなかった。大学進学を機に上京。三年生の時、「秋田と東京のパイプ役になりたい」と、高校時代の同級生と大好きな秋田をPRする活動を開始。秋田と都内の企業をつなぎ、秋田のお菓子を販売したりした。
 四年生の夏、「卒業式で地元のものを身に着けたい」と、秋田の手まり職人にかんざしの製作を依頼。実際に会って話を聞くうちに手まりのかわいらしさに魅了された。同時に、後継者不足などの問題も知り、「こんなにかわいいのに、数年後にはなくなってしまうかも」と危機感を抱いた。
 卒業後はIT関係の会社に就職したが、手まりへの思いは消えなかった。大学時代の活動で知り合った飲食店を運営する会社の社長に相談すると、東北各地の職人から手まりを仕入れて販売する事業に乗り出してくれた。佐藤さんも会社員のかたわら、デザインの企画や仕入れに関わった。
 「職人としっかりと話せるように」と手まり作りにも挑戦。失敗の連続だったが、職人から手ほどきを受けながら、技術を磨いた。

手まりをモチーフにしたピアス

 二〇一八年秋には、現在工房がある場所で由利本荘市とコラボして、移住イベントを開催。そこで手まり作りのワークショップを開いた。同世代の女性たちが「かわいい」と言いながら、夢中で挑戦してくれた。「大好きな手まりとふるさとに興味を持ってくれてうれしかった」と振り返る。ますます手まりが好きになった佐藤さんは、「本格的に取り組みたい」と会社を辞めた。一九年二月には、手まりの販売事業に乗り出してくれた会社が「はれてまりカフェ」をオープン。同年夏には工房も立ち上がり、館長に就任。ワークショップの講師やアクセサリーのデザイン、全国各地の手まりの販売、商業施設のディスプレー装飾まで幅広く活躍している。
 「贈り物でもある手まりには、誰かの幸せを願う優しさが詰まっている」。佐藤さんは、お客さんも職人も、手まりに関わるすべての人の幸せを願いながら、手まりの魅力を発信している。

工房に併設された「はれてまりカフェ」。手まりのように丸い形のピーベリー豆を使ったコーヒーを楽しめる

 はれてまり工房は足立区千住東2の5の14。正午〜午後6時。月曜定休。
 文・西川正志/写真・坂本亜由理
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