【独自】調布陥没事故 「地盤の緩み確認ない」10軒に移転・買い取りを打診 東日本高速

2022年4月9日 06時00分
 東京都調布市の住宅街で、東京外郭環状道路(外環道)のトンネル掘削により陥没・空洞が発生した事故で、東日本高速道路が、地盤の緩みを確認していない同市の民家10軒に移転・買い取りの打診を始めたことが分かった。同社が、地盤が緩んだ民家以外の買い取りに乗り出すのは初めて。同社は「今後の地盤補修工事のため」としている。(花井勝規、加藤益丈)

◆「今後の地盤補修工事のため」

 陥没・空洞は、地下約47メートルを通る外環道の南行きトンネルの掘削で発生。今回、移転などの対象となる民家は、同トンネルのすぐ東側に並行する北向きトンネルの掘削予定区域に一部がかかっている。
 住民に提示されたのは、土地・建物の買い取りか、工事終了までの一時移転の2案。移転なら仮移転先の借家代や現地で再建する際の新築代を全額補償する。月内に意向調査を終え、約3カ月かけて査定作業を終えるという。
 東日本高速はこれまで、地盤が緩んだ掘削済みのルート上の民家約30軒を順次解体、更地にして地盤をセメント系固化材で強化する工事を計画。幅16メートル、長さ220メートルの範囲で、約2年かかるとしている。
 今回、移転を打診した土地は、この工事に使う重機や資材を置く場所に活用したい意向で、同社は「地盤補修を速やかに実施するため」としている。土地は南北約150メートル、面積4000平方メートル前後になる。

◆買い取り対象はルート近い被害地域

 東京都調布市の住宅街で東京外郭環状道路(外環道)のトンネル掘削で陥没・空洞が発生した事故で、今回、東日本高速道路が買い取りに向けて動きだした調布市若葉町の住宅街は、掘削工事が行われたトンネルルートの真上ではないにもかかわらず、振動による建物の損傷被害が集中したエリアだった。
 一帯は1960年代に水田を京王電鉄系の不動産会社が宅地開発した場所で、表層近くの地盤は元々、軟弱だった。1年半前、付近の地下を国内最大のシールドマシンが通過した前後から振動への苦情が相次ぎ、建物や塀などへの被害も多く見つかった。
 工事がストップした後でも「ひび割れが広がっている」との住民の要請を受け、稲積真哉・芝浦工業大教授が地盤調査を実施。工事の振動が軟弱地盤で増幅され、地表近くが緩んだ可能性を指摘したが、東日本高速は独自の地盤調査で、「トンネルの真上以外に緩みはない」とこれを真っ向から否定し、振動被害のメカニズムは解明されないままになっている。
 「被害の原因究明を求める住民の声が小さくなるのは確実で、臭い物にフタなのだろう」と住民の間には冷ややかな見方が広がっている。(花井勝規)
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 東日本高速道路関東支社の担当者は「現在、地盤補修工事の施工方法などの検討を進めている。周辺住民の方々への影響を極力低減しながら、より安全に、より早期に地盤補修を行うため、今回新たに周辺住民の方々へ、資機材ヤードなどに必要な工事用地の提供を依頼している」と述べた。その上で「周辺住民の方々にお願いしている立場であり、今回これ以上、回答できない」とした。

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