防衛費増へ自民がGDP比2%案 ウクライナ侵攻受け 達成なら米中に次ぐ規模 平和主義の形骸化に懸念

2022年4月9日 06時00分
 ロシアのウクライナ侵攻を受け、政府・自民党は防衛費の大幅増を目指している。政府が検討する敵基地攻撃能力の保有を視野に、自民党安全保障調査会は現在の国内総生産(GDP)比1%程度から2%へ引き上げる案を今後の論点整理として示した。2%なら米国と中国に次ぐ規模になる。憲法が掲げる平和主義の理念が一層、形骸化すると専門家は懸念する。(川田篤志)

◆「党内で反対する人はいない」

 岸田文雄首相は8日の記者会見で、ウクライナ侵攻を受けた日本の防衛力について「あらゆる選択肢を排除せず検討し、スピード感を持って抜本的に強化していく」と明言した。
 防衛費を巡っては、1976年に三木武夫内閣が1%枠を超えないとする方針を閣議決定。86年に中曽根康弘内閣が撤廃したが、1%程度で推移してきた。安倍政権以降、増額が目立ち、当初予算で2022年度まで8年続けて過去最大を更新。本年度当初予算で約5兆4000億円だった。
 ストックホルム国際平和研究所によると、20年、日本の防衛費は世界9位。GDP比2%は約5兆5000億円を上積みして11兆円ほどにする計算で、世界3位の規模になる。増加分は消費税2%分に相当する。
 安保調査会の幹部は、ロシアのウクライナ侵攻を受け「もし中国による台湾有事が数年後に起きて日本にも危機が迫った時に、何も準備していませんでしたでは済まされない。部隊や装備の充実を急がないといけない」と強調。防衛相経験者は「党内で対GDP2%目標に反対する人はいない」と明言する。

◆識者「憲法違反が問われてくる」

 政府・自民党は増やした防衛費を、相手国の軍事拠点をミサイルでたたく敵基地攻撃能力に活用する予算に使うことも視野に入れる。敵基地攻撃能力の保有は専守防衛を逸脱する恐れが指摘される。
 自民党は昨年の衆院選で、欧米の軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)にならって対GDP比2%を目指すと公約した。同党は防衛力強化に関する論点整理を踏まえ、月内にも政府に提言を提出。政府は年末に改定する外交・防衛政策の長期指針「国家安保戦略」と防衛大綱、中期防衛力整備計画(中期防)に反映し、防衛力の抜本的な強化に乗り出す。
 政府は防衛白書で「他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」方針を掲げている。日本体育大学の清水雅彦教授(憲法学)は本紙の取材に「日本は既に『軍事大国』だが、対GDP2%まで増やすようなら自衛隊を『軍隊ではない』という政府の主張はますます成り立たなくなり、憲法違反が問われてくる」と指摘。「ロシア侵攻から学ぶべきは、中国を含むアジア地域での安全保障の枠組みをつくることで、防衛費を増やすことではない」と話す。

おすすめ情報

政治の新着

記事一覧