<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (3)線量計が振り切れた

2020年4月23日 02時00分

ベッドや車いすなどが入り口に放置されていた双葉厚生病院。避難の慌ただしさを物語っていた=福島県双葉町で(豊田直巳さん提供)

 原発事故三日目の二〇一一年三月十三日午前、写真家の豊田直巳さん(63)は映像取材の仲間とともに、人影のない双葉町役場を後にし、近くの双葉厚生病院に向かった。ここにも人影はなかった。舗装が割れた入り口の外にはベッドやストレッチャー、車いすが乱雑に放り出されていた。
 「よほど慌ただしく避難したんだな」。停電なのだろう。開けっ放しの入り口から病院内に入ると、照明は消え、通路にはマットや樹脂チューブ、点滴バッグなどをぶら下げる器具が散乱していた。診察室では、医療機器や棚が倒れ、足の踏み場もなかった。
 東京電力福島第一原発の北西わずか四キロ。汚染は役場周辺もひどかったが、ここもひどかった。高精度の線量計は常時振り切れ、使い物にならなかった。毎時一〇〇マイクロシーベルトまで測定できる仲間の線量計も振り切った。イラクなどで使ってきたやや旧式の線量計を取り出した。精度はいまひとつだが毎時一〇〇〇マイクロシーベルト(一ミリシーベルト)まで測定可能。だが、こちらも振り切った。
 どこまで高線量なのかもはや知るすべがない。思わず「信じられない。怖い…」と口走ったという。こんな場所に一時間もいれば、確実に一般人の年間被ばく線量限度(一ミリシーベルト)を突破してしまう。長居はできない。
 もっと周辺も取材したかったが、病院は海から二キロほどしか離れておらず、近くまで津波が来ていた。車で数百メートル走ったところで、津波によるがれきの山と、地震による道路の陥没で進めなくなった。やむなく国道288号を山側に戻って浜通りを大きくう回する形で、県北部の新地町や相馬市に向かった。

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