炊き出しに集う人達、「まん延防止」解除後も後絶たず 市民団体「生活困窮の実態は変わっていない」

2022年4月10日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染第6波後、経済活動が再開される中でも生活困窮者向けの炊き出し現場に来る人は後を絶たない。記者が先月から今月にかけて計4回、東京都渋谷区内の炊き出し現場を訪れたところ、今月上旬にはコロナ禍で過去最多に近づく配食数だった。困窮現場は、先行きに明るさが見えないまま第7波の入り口に立っている。(山下葉月)

鶏肉と野菜のまぜご飯を詰めたパック。受けとる人は後を絶たない=東京都渋谷区で

 訪れたのは、渋谷区内の公園で実施する市民団体「のじれん」の炊き出し。毎週土曜日、ボランティアと路上生活者が一緒に調理している。定番メニューは野菜と鶏肉のまぜご飯。約400グラムずつパックに詰め、バナナや缶のお茶と一緒に渡す。必要に応じ、生活相談なども行う。

◆ひとつの傘を2人で使う男女も

 まん延防止等重点措置の解除を政府が決めた直後の3月19日夕、配食準備を始めた頃から雨が降り出した。気温約10度と肌寒さが身に染みるが、集まった人は多い。中には一つの傘を2人で使う夫婦らしき男女の姿もあった。

パックめしをバナナや缶のお茶と一緒に

 のじれんによると、2月下旬ごろから配食数はコロナ禍前と同規模の約100食だったが、今月2日は約160食に達した。一昨年のコロナ第1波で各地の団体が炊き出しを控え、渋谷に流れてきたころの水準という。同日は都庁前の食品配布会でも過去2番目に多い550人が訪れ、困窮している人が高止まりしている状況が続いている。
 3月26日には都内の1週間平均の新規感染者数は6274.9人と第6波以降で最低となっていた。団体は「社会は経済活動再開に向かっているが、毎回新たに訪れる人がいて、生活困窮の実態は変わっていない」とみている。

◆「会社がつぶれたような状況に」

 現場に通う中、今年1月から路上で暮らす50代の男性に話を聞いた。10年以上、運送関連の有限会社でドライバーとして働き管理職にも就いたが、コロナ禍の業績悪化で「会社がつぶれたような状況になった」。会社を離れ、小さなスーパーで契約社員として鮮魚をさばき、刺し身を作った。だが、コロナ禍で客足が減っていたこともあり、契約を切られた。
 貯金で暮らしていたが、家賃や生活費を払うことが苦しくなり、今年1月4日、路上生活をするようになったという。

◆住まいある人も炊き出しに

 一方、男性のように路上生活に至らずとも、炊き出し現場に通う人も目立っている。のじれんは今年1~2月、のべ386人に聞き取り調査を実施。回答した83人のうち、車中泊やネットカフェ利用者などを含め「ホームレス状態」の人が66.3%(55人)である一方、アパートなど住まいがある人が33.7%(28人)を占めた。こうした人は2014年の調査で1割強だった。コロナ禍で困窮し食事を満足に取れない人が、路上生活者以外にも増えている現状が浮かび上がっている。

のじれんの調査に携わった東洋大の木村正人教授(社会学)の話 コロナ禍以降に仕事や家を失い、路上生活を送る人が相当数いる一方、家や帰る場所があっても炊き出しを利用せざるを得ない人が増えている。困窮で住所を失った人を公助が取りこぼしているだけではなく、給付金や生活保護の運用が、困窮の実態に追いついていない。民間の支援(共助)や自助努力は、限界がきている。

関連キーワード


おすすめ情報