「プーチンの脅しに影響されないため」イギリスは原発8基新設へ エネルギー自給目指し欧州で原発新設や延長の動き 

2022年4月9日 20時47分
7日、英南西部のヒンクリーポイントC原発で、コントロールセンターを視察するジョンソン首相(右)=AP

7日、英南西部のヒンクリーポイントC原発で、コントロールセンターを視察するジョンソン首相(右)=AP

 【ロンドン=加藤美喜】ロシアのエネルギー依存脱却を目指す欧州で、原子力発電所の新設や延長の動きが出ている。ロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギー安全保障の観点から電力自給を高める狙いだが、高コストや安全面から懸念の声も上がっている。
 英政府は7日発表の新エネルギー戦略で、2030年までに最大8基の原発新設を承認する方針を表明。50年までに電力需要の25%を原発で賄う目標を掲げた。洋上風力や太陽光、水素エネルギーも促進し、30年までに電源構成の95%を低炭素エネルギーにするとしている。
 ジョンソン首相は7日、訪問先の英南西部ヒンクリーポイントC原発で、新戦略について「われわれは世界の原油や天然ガス価格の変化に左右されず、プーチン(ロシア大統領)の脅しにも影響されてはならない」と説明。8日にもロンドンでドイツのショルツ首相と会談し、エネルギー自立の重要性を強調した。
 英国では現在、6発電所で11基の原発が稼働し、電力供給の約15%を占めるが、老朽化で多くが数年以内に運転を停止する予定。新戦略では次世代型の小型モジュール原子炉(SMR)の開発も推進し、「英国が再び原発技術で世界をリードする」としている。
 11年の福島第一原発事故後、ドイツが「脱原発」を決定するなど各国で原発の新設は見送られてきたが、新型コロナウイルス拡大後の経済活動再開やロシアのウクライナ侵攻で、欧州ではエネルギー価格が急騰。電力自給の向上や気候変動対策の観点から、原発を見直す動きが進む。
 ロシアから多くの原油や天然ガス、石炭を輸入してきたポーランドでは、モラウィエツキ首相が先月30日、「ロシアはエネルギーを戦争の道具に変えた」と述べ、年内に全てのロシア産エネルギーの輸入を停止すると宣言。他国からの輸入に切り替えるほか、40年までのエネルギー戦略を更新し、原発と再生エネルギーの導入を加速する。
 25年までの脱原発を決定していたベルギーも先月、一部原発の35年までの運転延長を決定。ロシア産天然ガスへの依存を避けるために判断した。
 しかし、原発の拡大には懸念も根強い。英国では野党などが「原発はコストが高く、家計の光熱費の削減にはつながらない」と批判。「家屋の断熱改修補助など、省エネ対策にもっと焦点を当てるべきだ」と訴えた。ポーランドでも、電力の10%を原発で賄うには225億ユーロ(約3兆円)かかるとの試算がある。
 英国の反核団体「核軍縮キャンペーン(CND)」は7日、「原発は今なお危険で、汚染された高額なエネルギーだ。軍事転用にもつながり、使用をやめるべきだ」と批判した。

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