姉妹都市ストーリー Youはどうしてこの街と

2022年4月10日 14時27分
 東京には不思議な縁で結ばれた友好・姉妹都市がいくつもある。「なぜこのまちが?」「なれ初めは?」。おもしろエピソードを集めてみた。

◆葛飾区 寅さんが結んだ縁

葛飾区とオーストリア・ウィーン市フロリズドルフ区の紋章が並ぶ花壇

 オーストリア・ウィーン市は東京特別区と同じ二十三区で構成され、北端のフロリズドルフ区は葛飾区と友好都市関係にある。

ウィーン市フロリズドルフ区にある葛飾通りの標識(いずれも葛飾区提供)

 縁を結んだのは、映画「男はつらいよ」だった。区によると、一九八六年、当時のウィーン市長が来日する飛行機の中で、たまたま映画を鑑賞。寅さんらが紡ぐ人情や葛飾の風情に感銘を受けた。江戸川沿いの柴又の風景が、ドナウ川に面したフロリズドルフ区と似ていたこともあり、ウィーン側から交流を希望した。
 フロリズドルフ区には「葛飾通り」や両区の紋章を飾った花壇がある。葛飾育ちの記者も大学時代、交流事業で訪れた。ウィーンが舞台の「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」も製作された。二〇〇九年には寅さん公園がつくられ、寅さんの笑顔の石碑が立っている。葛飾は「音楽の都」で存在感を発揮している。
 柴又にも一七年に「フロリズ通り」が誕生。付近ではオーストリアワインや民芸品の販売、音楽の演奏などを行う祭りも開かれるようになった。
 実行委員長の斎藤清一さん(77)は「大切に育てた両区の縁だが、地元の認知度はまだまだ低い。寅さんと一緒に新しい葛飾の魅力として発信していければ」と思いを込めた。

◆品川区 スイスから鐘返る

ジュネーブ市から品川寺に返還された梵鐘=品川区で

 品川区はスイス・ジュネーブ市と友好都市。京急・青物横丁駅前の「ジュネーヴ平和通り」に近い品川寺(ほんせんじ)の梵鐘(ぼんしょう)が、きっかけになった。
 寺や区によると、六体の観音像が装飾され、「江戸名所図会」に「世にまれなる」と記された梵鐘は一八六〇年代に海外に出展され、所在不明になった。
 一九一九年、なぜかジュネーブ市内で発見。事情を知ったスイス側は快く梵鐘の返還に応じ、三〇年、日比谷で歓迎会が行われ、牛に引かれて寺に戻った。以来、地元では鐘と金をかけ「金返り寺」と縁起をかつぐこともあるらしい。
 寺側は九一年、お礼に新しい梵鐘をジュネーブに贈呈。これを機に、友好都市となった。梵鐘は同市アリアナ美術館で展示され、日本時間の年越しに合わせて除夜の鐘を鳴らすそうだ。寺務長の佐久間秀紘さん(53)は「寺と鐘が今後も二つの街の交流拠点になってほしい」と話した。

◆文京区 巨大魚がいる訳は?

カイザースラウテルン広場の魚の像。頭部には市の発展に尽力したフリードリヒ1世の頭像が付いている=文京区で

 文京区には思わずギョッとする巨大魚の像がある。場所は地下鉄茗荷谷駅前のカイザースラウテルン広場。同区の姉妹都市、ドイツ・カイザースラウテルン市にちなんだ広場で、魚は同市の紋章のモチーフだ。
 締結は一九八八年。区は六都市に区議会の調査団を派遣、緑豊かで大学など研究機関が多いという共通点がある同市を選んだ。そんな経緯は多分知らない子どもたちが、魚の背に乗って遊んでいた。

◆足立区 飛び込み営業が奏功

ベルモント市の心を動かした英語版パンフレット。今では庁舎内に2部しか現存しないという=足立区で

 足立区は飛び込み営業が功を奏した。英語版パンフレット「ADACHI」を作り、各国大使館にまいたところ、オーストラリアのベルモント市が反応。一九八四年十月に姉妹都市を提携した。パンフレットにはラッシュの北千住駅や伝統的な地域の祭り、銭湯などがダイナミックな写真付きで紹介されていた。

ユーカリの木やヒツジのモニュメントに加え、赤れんがの建物には、オーストラリアの工芸品も展示されている足立区立ベルモント公園

 区役所の近くには「ベルモント公園」がある。メルヘンチックな赤れんがの建物の中には、オーストラリアの民芸品などが展示され、庭には羊のオブジェも。土日のみ開館。足立にいながらにして海外旅行をした気分になれる。
 文と写真・山下葉月
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