<ふくしまの10年・行ける所までとにかく行こう> (2)何を撮ればいいのか

2020年4月22日 02時00分

双葉厚生病院の患者らを搬送中とみられる自衛隊ヘリ=福島県双葉町で(豊田直巳さん提供)

 二〇一一年三月十三日午前十時、写真家の豊田直巳さん(63)は、福島県双葉町にある崩落したJR常磐線の鉄道橋付近で放射線量の測定や撮影をしていた。
 大震災の被害は見てわかるが、東京電力福島第一原発がまき散らす放射能は色もにおいもない。想像を超えた高線量を計測し、これまで経験したことのない異常事態であることは明確だ。しかし、「いったい何をどう撮れば目の前の現実を伝えられるというのか。頭の中は大混乱だった」という。
 そんな時、常磐線の切れた架線の向こうに、バタバタバタとごう音をとどろかせ、二つのローターをもった自衛隊の大型ヘリが飛んでいった。ヘリが何のために飛んでいたのか分からなかった。反射的にシャッターを切った。
 後で確認すると、双葉厚生病院の患者を約六十キロ西の二本松市に搬送するためだった。同病院の入院患者らの避難は前日から自衛隊のトラックやヘリなどで始まったが、十三日になっても一部の患者や職員がヘリ発着所に指定された双葉高校に残っていた。
 ヘリが飛び去った後も付近の住宅地で線量を測って回ったが、どこも異常値を示す。毎時六マイクロシーベルトは当たり前のようにあり、都内の百倍を優に超える高濃度汚染が一面に広がっているのは明らかだった。
 現状を住民たち、双葉町役場は分かっているだろうか。すぐに知らせるべきだと考え役場に向かった。車で数分で着いた。避難指示を理解していないお年寄りが一人取り残されていた。入り口前の時計は二時四十六分で止まり、入り口の扉は閉まっていた。裏に回っても人の気配がなかった。
 住民を守るとりでの役場が、何の書き置きもしないまま避難せざるを得ない事態なのだと感じた。

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