<新型コロナ>3.11伝承ピンチ 語り部キャンセル続々 福島・富岡の団体、DVD作成

2020年4月20日 16時00分

東日本大震災で被災した宮城県石巻市立大川小で、語り部活動をする佐藤敏郎さん(左)=1月

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、東日本大震災の被災者が自身の経験や後世への教訓を伝える語り部活動や、震災学習プログラムの予約キャンセルが相次いでいる。来年三月で震災十年の節目を迎えるが、収入減などで活動の継続が困難と感じている団体も。「伝えようと思っても伝えられなくなる」。関係者は危機感を募らせる。
 岩手県陸前高田市の語り部釘子(くぎこ)明さん(61)は職業として語り部活動をしている。二~四月、約二百九十人に被災体験を話す予定だった。ところが感染拡大に伴って全てキャンセルとなり、三十万円以上の損失が出た。
 感染リスクも考慮し五月十日まで活動の自粛を決めた。六月以降、二件の予約が入っているが先行きは不透明。収入面への不安は切実だ。「このままでは活動の存続が難しくなるかもしれない」
 語り部団体などでつくる「3・11メモリアルネットワーク」は三月二十五日~四月七日、伝承活動に関わる団体や個人に感染拡大の影響を尋ね、岩手、宮城、福島三県の語り部や震災学習に取り組む岐阜、愛媛両県の学校関係者ら計三十の団体・個人から回答を得た。少なくとも計九千二百三十五人の予約のキャンセルが発生していたことが判明した。
 二月下旬から相次ぎ、五~六月の修学旅行シーズンや、夏休み期間の取り消しもあった。三月は例年、震災が発生した十一日と春休みが重なることもあり、参加者が集中する。しかし、今年三月は参加者数が前年同月比で50%以下になった、と約八割が答えた。10%以下との回答も。自由記述では「見込んでいた収入が激減」「これがいつまで続くのか」と不安の声が寄せられた。
 NPO法人「富岡町3・11を語る会」では、三~五月に福島県富岡町を巡るツアーや講演会に約四百二十人が参加する予定だったが、取り消しとなった。現在、町の様子を伝えるDVDを作成し、キャンセルした人へ届ける準備中だ。青木淑子代表(72)は「支援者や、町に興味を持ってくれている人とのつながりだけは消さないようにしたい」と語る。
 宮城県石巻市立大川小の犠牲者遺族らでつくる「大川伝承の会」は三、四月、定期的に旧校舎で開く語り部の活動を取りやめた。佐藤敏郎さん(56)は「現地のガイドだけが伝承ではない。何をどう伝えるか、改めて考える機会だ」と話す。
 調査に協力した東北大の佐藤翔輔准教授(災害伝承学)は「事業の継続に悩む伝承団体が相談できる態勢を整えることは必要だ」と指摘している。

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧