災害時の水源 井戸ここに @小平 マップ作成の市民団体「地域で守る態勢を」

2022年4月12日 06時30分

小平井戸の会が作った井戸マップを前に「公園や避難所にも井戸を掘って空白地帯をなくしてほしい」と話す金子尚史さん=小平市で

 災害で断水した際に困るのが、トイレや風呂で使う生活用水の確保。首都直下地震で想定される大規模災害に備え、小平市の市民団体「小平井戸の会」は、非常時に市内の民家や事業所の井戸水を近所の人も使える環境づくりを進め、井戸のマップを会のホームページ(HP)で公開している。
 「市の防災マップだけでは、災害時に市民が井戸にたどり着けないかもしれない。使えるマップを自分たちで作ろう」。会長の金子尚史さん(78)と会員十数人は二〇一六年、市内の民家を回り始めた。
 井戸の活用を災害対策に組み込む自治体は少なくない。例えば隣の国分寺市は公園など二十三カ所に手押しポンプの井戸を設置し、普段から市民が自由に使えるようにしている。小平市でも、所有者の協力が得られた民間の井戸を「震災対策用井戸」に登録し、防災マップに掲載。だが「このマップでは詳細な位置が読み取りにくい」と金子さん。個人情報保護を理由に、市は番地などを載せていないからだ。防災マップを頼りに金子さんが探しても見つからない井戸が複数あった。

「小平井戸の会」が作ったマップ。市の震災対策用井戸は青、会が調査した民間の井戸は赤、事業所の井戸は黄色で示されている

 金子さんは、阪神大震災や東日本大震災の被災地で、断水のためトイレの水を流せずに大きな問題となったことを書籍などで知った。災害時の井戸水の活用に関心を持ち、市内の井戸の実態を調べようと、阪神大震災から二十年の一五年一月十七日に会を設立した。
 井戸は民家や事業所一軒一軒を訪ね歩いて探した。「ポイントは庭があり、築四十年以上に見える家を訪ねること。歩いていると大体分かるものですよ」と金子さん。ただ、門前払いされることもしばしば。井戸があっても埋められていたり、壊れていたりと苦労の連続だった。使える井戸があれば使用状況や揚水方法、災害時の近所への提供の可否などを住人から聞き取って調査票を作成。約二年かけて市内全域の井戸のマップを完成させた。

【ビフォー】 市内の民家で使われなくなっていた井戸

 二十リットルのポリタンクに水を入れて持ち運べる距離を二百メートルと想定し、マップには井戸を中心とする半径二百メートルの円を描いた。市の「震災対策用井戸」に登録されていない井戸も百二十二基掲載。所有者の半数は「災害時は近所に提供したい」と答えてくれた。会ではマップの完成後も定期的に各家を訪ね、状況に変化があれば更新している。会の勧めで、使えなくなっていた井戸を直した家もある。

【アフター】 修理後の井戸。修理には60万~120万円かかるが、新たに掘る費用の半分ほどだという=いずれも小平井戸の会提供

 「井戸を使える状態で守っていくことは簡単ではない」と金子さんは課題も指摘する。井戸の水質や水量を保つには、日常的な使用が欠かせない。手押しポンプの井戸は停電時も使える強みがあるが、水をくむのに力が必要で、特に高齢者には負担が大きい。金子さんは「町内会や自主防災組織が間に入り、近所の人が水くみを手伝って地域で井戸を守る態勢をつくっていければ」と話す。

小平井戸の会が発行した冊子

 会は市内外で防災講座を開き、活動を広めることにも力を注いでいる。昨秋にはこれまでの調査結果や提言をまとめた冊子「身近にある水源 災害に有効な井戸」を発行した。冊子は非売品で、講座の教材として配布している。金子さんは「命を守るため、こうした市民による取り組みが全国に広まってほしい」と願っている。
 マップは会のHP(http://www.kodaira-idonokai.tokyo)に掲載。問い合わせはEメール(idonokai@gmail.com)で。
文と写真・林朋実
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