足切断のリスク 末梢動脈疾患 複数の診療科“総合治療” 横浜の病院、退院後まで視野に

2022年4月12日 09時06分

患者(右端)を形成外科医(中央)らと診察する毛利晋輔医師(左端)=横浜市鶴見区で

 糖尿病や高血圧といった生活習慣病などから足の動脈硬化が起き、血流が悪くなる末梢(まっしょう)動脈疾患。痛みやしびれ、ひどい場合は足の壊疽(えそ)を引き起こして切断に至る例もある。この疾患に、複数の診療科の医師が連携して対応する「フットケア治療センター」を、済生会横浜市東部病院(鶴見区)が設置した。足の病変を複合的に診る専門の診療科は少ないとされ、昨年10月の開設以降、外来患者は1.5倍に増えた。 (五十住和樹)
 昨年秋、右足の親指と人さし指にできた大きな傷で入院した七十代女性。傷の原因は不明だが、糖尿病の合併症で腎機能が低下して透析治療も受けていたため、同センターの循環器内科医、毛利晋輔さん(40)を中心に腎臓内科、糖尿病内科、血管外科の四科の医師が合同で診察・治療をした。
 右足は血流が悪い末梢動脈疾患の状態で細菌に感染しており、最終的に全部の指を切断。しかし、血管が狭くなったり、閉じたりしている部分を迂回(うかい)させるように別の血管をつなぐバイパス手術の結果、脚全体を切断する事態は免れた。十二月には退院し、現在は三カ月に一回、通院する。指先に着けた装具のおかげで歩くこともできるという。
 同病院には二〇〇七年の開院時から、足の血管治療の専門医による「フットケア外来」があった。ただ足の異変はさまざまだ。「どの科を受診したらいいか迷う」との声を受け、センターを開設した。「足のことならここへ」を掲げ、皮膚科や形成外科、整形外科も含めた横断的な診療態勢を整え、血糖値の管理や感染対策など患者の状態に合わせた治療を可能にした。
 入院患者には、糖尿病看護認定看護師や理学療法士、薬剤師、管理栄養士、義肢装具士、公認心理師、ソーシャルワーカーなど多職種のチームで対応するのも特徴だ。月二回の会合で治療方針などを検討。退院後の自宅療養や介護を見据え、地域のケアマネジャーとも連携する。開設後は、外来の患者数が月百六十〜二百人に増えた。
 末梢動脈疾患は六十五歳以上の男性に多い。糖尿病をはじめ脂質異常、高血圧などの生活習慣病や喫煙習慣が引き金となる。「脚の血流が悪いと、たこやうおのめ、水虫などでも、それをきっかけにできた傷が重症化しやすい」と毛利さんは言う。診断ではまず、両腕と両足首の四カ所で同時に血圧を測るABI検査を実施。腕の血圧に比べ脚の血圧が一割以上低ければ末梢動脈疾患の疑いが強く、下肢動脈エコー、CTやMRIで詳しく検査する。
 禁煙など生活習慣の改善やウオーキングといった運動療法などで効果が上がらない場合は、バイパス手術や、血管の狭くなった部分にカテーテル(細い管)を差し込んでバルーン(風船)を膨らませるか、ステントと呼ばれる金属を使って広がった状態を維持するなどの治療をする。毛利さんはカテーテル治療の専門家だ。
 末梢動脈疾患の原因で多い糖尿病の患者は、網膜症に加え、痛みや熱さなどを感じにくい神経障害を合併しやすい。一七年の厚生労働省の調査によると、国内の糖尿病患者は約三百二十九万人で、うち七割に神経障害などの合併症があるとされる。毛利さんは「視力低下で足先が見にくく、感覚も鈍っている場合、気がついたときには切断寸前まで壊疽が進んでいる例が多い」と警鐘を鳴らす。医学雑誌「ランセット」は〇五年、「糖尿病のために世界で三十秒に一本、足が失われている」と報告した。
 「皮膚や爪の変色、治りにくい傷には注意して」と毛利さんは訴える。また、末梢動脈疾患の患者は、脳や心臓の血管に問題があるケースも多い。毛利さんは「早期の受診は、心臓病などの早期発見につながるメリットもある」と話す。

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