【動画】「もし路上で友人の遺体を見ていたら…」ブチャで支援物資配るアレクサンダーさん<ウクライナからの声>

2022年4月13日 06時00分

 徴兵の可能性があるため、ウクライナの首都キーウ(キエフ)に残るアレクサンダー・コトリアーさん(28)。「支援物資を届けにブチャに行った」と連絡があり、12日夜に電話してみた。ブチャといえば、住民が多数殺害されたキーウ近郊の街だ。一般人も自由に出入りできるようになったのだろうか。アレクサンダーさんは、自身が撮影したビデオや写真を交えながら、ブチャや他の町の様子を詳細に語った。(聞き手:カイロ支局・蜘手美鶴)

ブチャ市内で破壊された建物(アレクサンダーさん提供)

 「ブチャに行ったのは6日。仲間と一緒に支援物資を届けて来た。道には車もたくさん走っていて、思ったよりも人が行き来していた。がれきは散乱していて、黒焦げの建物がいくつもあった。遠くで爆発音が聞こえたけど、ウクライナ軍が残った不発弾を処理している音だと聞いた」

 ブチャでは市街地に多くの住民の遺体が横たわっている様子が報じられている。現在はどうなっているのだろうか。

ブチャ市内で。かつての目抜き通りには焼け焦げた戦車が放置されている(アレクサンダーさん提供)

 「僕らボランティアが入ったときは、もう路上に遺体はなかった。ボランティアの中には、ブチャに友人や親戚が住んでいたという人もいる。もし僕らが路上で友人たちの遺体を見たら、辛すぎて耐えられないだろう。そういうこともあって、ボランティアが街に入る前に遺体は運び出されたようだ」
 「特にひどかったのが『ボクサルナ通り』だった。イルピンに続く目抜き通りなんだけど、道沿いの家々は粉々に吹き飛んで、道には大きな穴が空いていた。ブチャ駅からイルピン方向に進めば進むほど、どんどん被害がひどくなっていた。目を開けて見るのがつらかった。こんなことが本当に起こりうるのか。道には焼け焦げた戦車も放置されていた」

6日、ブチャ市内で、ロシア軍兵士に配給されたとみられる食料ボックスのゴミ。「ロシア軍」「非売品」などと書かれている(アレクサンダーさん提供)

 「ブチャ駅近くには、ロシア軍が捨てたゴミも落ちていた。食事が入っていた紙袋で、『ロシア軍』『非売品』と書いてあった。彼らがまさにここにいて、これを食べて、街を壊していった証しだ。イルピンの方角からは、不発弾を処理する爆発音が聞こえていた。ボランティアはまだイルピンには入れない」
 「ブチャの人たちと話すと『どうもありがとう。もう大丈夫だよ』と言う人がいる。でも、彼らが本当に『大丈夫』なのかは分からない。笑顔もないし、前向きな言葉もない。街がこれだけ破壊され、家族や友人が殺害され、戦闘はいつ終わるかも分からない。その言いようのない不安は、僕も同じだからよく分かる」

 自身が住むキーウも安全とは言い難い中、他の街の人のために物資を届けるアレクサンダーさん。車のない人たちを目的地に連れていくボランティアもしているという。ブチャ以外の街も訪れたのだろうか。

ブチャ市内で破壊された建物(アレクサンダーさん提供)

 「4日から6日にかけて、ブチャ以外の街にも物資を届けて回った。キーウの西約20キロにあるマカリブでは、爆撃で橋の真ん中に大きな穴が空いていた。のぞき込んだら、川が流れているのが見えた。近くにはボロディアンカという小さな町があって、ここでもロシア軍とウクライナ軍の激しい戦闘があった。もともと高い建物は十棟ぐらいしかなかったけど、ほぼ全て被害を受けていた。町に残っていたのは高齢者が多かった。高齢の男性と話したら、『ここで生まれたから、ここで死ぬ』と言っていた」

 アレクサンダーさんは1時間近くかけ、じっくりその目で見たものを説明してくれた。時計はすでにキーウ時間の午後10時半を回っていた。お礼を言うと、アレクサンダーさんはこう話して電話を切った。

 「明日もブチャに物資を届けに行く。発電機をいくつか運ぶ予定になっている。これからポーランドに避難している妻と娘(3つ)にビデオ電話をかけるよ。僕の大切な日課なんだ」

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