孤高の喜び ソロキャンプ 何もせず「おうい雲よ」

2022年4月13日 07時12分

川井キャンプ場で暮れていく風景を眺めながらたき火を囲んで語り合う重信さん(右)と坂本記者

 キャンプといえば仲間たちとたき火を囲んで談論風発、高歌放吟(こうかほうぎん)、最後は酔いつぶれる。そんなイメージを抱いていた。しかし近ごろは、たった一人でテントを張り、鳥の声、川のせせらぎに耳を澄ませ、何もせず、ぼんやりと過ごす、そんな「ソロキャンプ」いや「孤独のキャンプ」が流行らしい。本当に楽しいのか。半信半疑で出かけてみた。

河原の石を積み上げ、かまどを作る重信秀年さん

 今回は、大学探検部OBでキャンプの達人、ライターの重信秀年さん(60)に教えを請うことにした。
 出かけたのは奥多摩町にある川井キャンプ場。車なら都心から二時間あまり。鉄道利用だとJR青梅線の「川井」駅から徒歩七分ほどで到着する。多摩川上流部の深い渓谷の底にあり、目の前を清流が流れている。崖の上をときおり電車がとことこ走っていく姿もかわいらしく、ただいるだけで気持ちがほっこりとしてくる感じの場所だ。

川の増水に備え、テントは水辺から離れた小高い平地に張る

 すでに数張りのテントがあったが、六十三歳の筆者が知る「昔のキャンプ場」とは、テントの張り方からして違うのに驚いた。
 ほとんどのテントが一〜二人用ほどの小型で、どれも周りからの視線を避けるように開口部を川に向け、入り口には決まってたき火用のかまどがある。

焚き火の炎を見ながらのんびり過ごす。日常を忘れる癒やしの時間だ

 テントの前で一人で薪の準備をしていた二十代の男性に声をかけてみた。
 「キャンプは初めてで取りあえず日帰りできました。雑誌でたき火の仕方を読んで自分でもやってみたくなったんです」と男性。
 たしかにソロキャンプは、流行であるらしい。

着火剤の代わりの松ぼっくり

 「ソロの醍醐味(だいごみ)は何もしないこと。個室のようなテントを張り、ただ川や空を眺めて、本を読み、たき火の火で遊び、眠る。積極的に孤独を楽しむ。これを魅力と感じる人が若者にも多いんです」と重信さん。
 ソロキャンプ女子の姿を描いたテレビアニメも人気で、作品に登場したキャンプ場を訪ねる「聖地巡礼」が盛んなのだそうだ。

重信さんが作ってくれた豪華な朝食=いずれも奥多摩町で

 こちらも早速、テント設営を開始。ソロの場合、テントを離れることができなくなるので、設営前に水や薪などの必需品をそろえるのがコツだそうだ。
 設営が終わったら、河原の石でかまどをつくり、重信さんが持参した松ぼっくりを着火剤代わりにして薪に火を付ける。
 日が高いうちから肉やサツマイモを焼き、ビールを飲む。腹が満たされれば、もう何もすることはない。
 国語教師の経験もある重信さんは、こんな時間、寝そべって本を読むそうだ。
 お薦めは、「短くて気楽に読める」という理由で種田山頭火の句集や山村暮鳥(ぼちょう)の詩集など。
 山村暮鳥といえば有名なのは、この詩。
 「おうい雲よ/ゆうゆうと/馬鹿(ばか)にのんきそうじゃないか/どこまでゆくんだ/ずっと磐城平の方までゆくんか」
 なるほど。これはソロキャンプのお供にはうってつけだ。
 ★川井キャンプ場 電0428(85)2206
 ◇
 重信さんが今回の場所を含めて案内する「おすすめ! ソロキャンプ 関東・中部厳選30」=写真=が発売中。景観がよく、設備などが整ったキャンプ場のデータを紹介。初心者へのアドバイスやご当地の歴史などに触れたコラムも。1650円。問い合わせは東京新聞出版・エンタテインメント事業部=電03(6910)2527=へ。販売サイトはこちらから
 文・坂本充孝/写真・田中健
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