「午後8時」が形骸化 「繰り上げ投票にNO!」 常総の市民団体が署名活動
2022年4月13日 07時53分
公職選挙法で原則午後八時までと決められている選挙の投票時間が、県内の大半の市町村で形骸化している。昨年十月の衆院選では四十四市町村のうち四十市町村が、投票所の終了時刻を午後六時または七時に繰り上げた。常総市の市民団体「常総つながるネット」は「有権者の投票機会を奪っている」と問題視。午後八時まで開けるよう求める署名活動をしている。(長崎高大)
昨年の衆院選で投票時間を午後八時までとしていたのは、いずれも県南地域の牛久、守谷、稲敷市と河内町のみ。水戸、龍ケ崎、つくば、ひたちなかの四市と境町は午後七時まで、ほか三十五市町村は午後六時までだった。
公選法は、投票時間について「午前七時に開き、午後八時に閉じる」と規定する一方、「投票の便宜のため必要があると認められる特別な事情がある場合」や「投票に支障を来さないと認められる特別な事情のある場合」に限り、四時間以内の範囲で繰り上げを認めている。
つながるネット代表の入江赳史(たけし)さん(33)は、昨年九月の知事選で常総市の投票所が午後六時で閉まったことに疑問を抱き、今年一月から署名活動を始めた。
入江さんは衆院選を例に挙げ、同市では一時間平均で当日有権者の2・78%に当たる千三百五十八人が投票したことから、二時間繰り上げることで約二千七百人が投票できなかった可能性があると主張。同市を含む茨城7区では、同市内の当選者と次点候補の得票差が三百三十八票だったとして、「投票できなかった可能性のある有権者数は、選挙結果を左右する大きなものだ」と訴えている。
入江さんが市選管に問い合わせたところ、夜間の投票率が低いことを繰り上げの主な理由として挙げたが、入江さんは「投票所を二時間早く閉じる特別な事情とは言えないと思う。市は否定するが、人件費削減の意図もあるのかもしれない」といぶかる。
署名は五月末ごろまで集め、市選管に提出する予定。入江さんは「行政は、有権者の声を一つでも多く集めて政治に反映されるようにするため、投票の機会を可能な限り保障すべきだ。まずは常総市から変えていきたい」と話した。
◆昨年の県内衆院選 割合、全国最高の95%
昨年十月の衆院選で投票時間を繰り上げた県内の投票所は、千三百六十八カ所のうち95%に当たる千二百九十四カ所。総務省によると、全国で最も高い割合で、全国平均の36%と比べても飛び抜けて高い。
投票時間は各市町村選管が決める。県選挙管理委員会によると、「期日前投票の定着」「夜間の投票者の少なさ」を繰り上げの理由に挙げる市町村がほとんどという。
県選管が選挙前に毎回、各市町村選管に送っている通知でも「安易に繰り上げはしない」ことを求めており、県選管の佐野貴之書記長補佐は「県としては午後八時まで開いてもらいたいという立場だ」と説明。他県と比べて繰り上げが多い理由は分析しきれていないとしている。
全国でも投票時間を繰り上げる市区町村は増加傾向にあるが、都道府県ごとに傾向は異なる。総務省によると、昨年の衆院選時点で繰り上げ投票所の割合が高かったのは本県のほか、島根の94%、鹿児島の90%、高知の89%、秋田と群馬の88%などだった。
一方、都市部では繰り上げが少ない傾向にあり、千葉、神奈川、大阪ではゼロ、埼玉と東京は2%、兵庫は3%だった。
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