「日赤発」偽LINE拡散 「コロナ病床満床、医療崩壊も」

2020年4月16日 12時06分

男性読者が受け取ったLINEの上部

 「日赤病院の新型コロナウイルス病床が満床」。神奈川県在住の男性(60)に先週末、そんな無料通信アプリLINE(ライン)が親戚から転送されてきた。しかし内容は怪しげだ。依頼に基づき、本紙が調べてみると、既に情報は全国に広がっていて…。(原田遼)
 文面は「日赤病院のドクターから送られてきた」「拡散して」で始まる。新型コロナ対応の病床が満床になったことに加え、「現場は医療崩壊のシナリオも想定」「このままでは命を選択する医療にシフトする」と、悲愴感が漂う。
 個々ができる対策として「うがい」「温かい液体を飲む」「果物と野菜を食べる」「解熱鎮痛剤はアセトアミノフェンのみ服用。イブプロフェンは服用しないで」と呼び掛けた。
 本紙に転送してくれた男性は「情報源が明らかでない」と疑問を持ち、拡散を見送った。しかし本紙がツイッターで検索すると静岡や岐阜、兵庫の三県でも同様のラインが届いたという報告が見つかった。

◆各地で「問い合わせで診療に支障」

 十四日に日赤(東京都港区)に問い合わせると、満床自体は否定しなかったが、「公式に発信している情報ではない」と回答。さらに各地の日赤関連病院も「問い合わせにより診療業務に支障を来している」と困っていた。
 文面にある解熱剤はどうか。世界保健機関(WHO)の報道官が同様の発言をしたことがあったが、その後はWHOは「イブプロフェンを控えることを求める勧告はしない」と修正。飲み物や食べ物についてはそもそも科学的根拠がなく、デマといえそうだ。

本紙記者に「ママ友」から転送されたLINEの上部。男性読者のLINEと比べ、病院名と情報源が記されている

 日赤を発信源と称するラインは、本紙記者にも「ママ友」から届いていた。だが、文面は同じように日赤の窮状を伝える一方、病院を「広尾の日赤医療センター」、出どころを「慶応の佐谷秀行先生からの転送です」とし、対策は「マスクと眼鏡の着用」「手指の洗浄」などと、ありふれたものに変わっていた。これも佐谷・慶大医学部教授が「私が流したものではない。これ以上拡散しないで」と大学ホームページで声明を出している。

◆政府広報への不信感が背景

 立命館大のサトウタツヤ教授(社会心理学)に二つのラインを見てもらった。「デマが拡散される典型的な手法。誰もが知る病院や実在する教授を書き込み、信ぴょう性を高める演出がされている」と分析。メッセージの変容については、「受け取った人が『自分はこういう情報も知っている』と付け加え、転送している。うわさというものは次の人に信じてもらうために、どんどんオーバーになっていくものだ」と指摘。
 デマ情報は不況や災害などで人々が共通した不安を抱えるときに広がりやすい。記者のママ友は「身近な人、大切な人の予防に少しでも役立てばいいと思って、拡散してしまった」としおれていた。サトウ教授は「政府の広報が曖昧で『真実を教えてくれない』という不信感があるからこそ、身近な人から届く情報を信じ込む。他国のようにリーダーが分かりやすく、正確な情報発信をしてほしい」と注文した。

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