「自分がコロナ感染源だったら…」 検査どころか相談すら困難 つのる不安

2020年4月15日 12時30分
 日々膨らんでいく国内の新型コロナウイルスの感染者数は「氷山の一角」かもしれない。全国最多の東京では、相談すら受けられない実態が浮かび上がった。感染の有無を調べるPCR検査の滞留は、「隠れ感染」の拡大を招きかねない。検査を受けられない人は「もし自分が感染源だったら怖い」と不安を漏らす。

◆電話1日100回…つながらず

 「政府が検査を拡大すると言っていたし、保健所に連絡すればすぐ検査してもらえると思っていた。何が二万人検査なの」。夫の感染を心配する東京都世田谷区内の女性(52)は、こう嘆く。
 広告代理店を経営する夫が「体がだるい」と訴えたのは五日夜。翌朝、熱を測ると三八度で、せきをすると胸が痛いという。国のガイドラインに従い四日たっても症状が治まらないので、九日になって世田谷保健所の相談窓口に電話した。
 夫婦で朝から電話してもつながらない。途中で夫は諦めて出社してしまった。一日だけで数百回はかけたという。
 夫の部下も、せきがひどくなり会社を休んだ。「感染に気付かないまま周りの人にうつし、まん延させるのが一番怖い。せめて陽性かどうか知りたい」

◆診療所から依頼も保健所拒否

 PCR検査には、かかりつけ医を通じて依頼するルートもある。ただ、このルートも狭き門だ。
 ある診療所は今月初め、診察した五十代の男性患者が感染の疑いが濃いと判断。地元の保健所に検査を求めたところ、「死にそうな症状でなければ検査できない」と断られた。
 診療所の院長によると、男性患者は三八度の熱があり、ウイルス性肺炎で呼吸も乱れるなど典型的な症状だった。診療所には今月に入って、感染が疑われる患者が週二、三人来るが、検査を受けた人はいない。
 都感染症対策課の担当者は「都は検査を絞っておらず、検査態勢の拡充に努めている」と説明する。
 ただ、患者の治療に当たる都内の感染症指定病院の医師は「現場の医師が検査を希望しても保健所が『典型例がない』と検査を絞る現状は変わっていない」と打ち明ける。必要な検査が絞られる副作用は病院内では特に深刻だとし、「気付かないうちに院内感染が進行し、病院が機能的死に陥る。むしろ検査基準を下げていくべきだ」と強調する。 (中沢誠、市川千晴)

◆「検査枠外から感染拡大」医師も態勢に異論

 検査態勢に対する異論は医師からも上がっている。群星沖縄臨床研修センター(沖縄県浦添市)の徳田安春センター長は、「検査が重症者と濃厚接触者に事実上制限されているため、実際の患者数を過小評価している。検査されていない軽症者や無症状者から感染が拡大していると考えられる」と指摘する。
 実際の国内の検査数は、最大でも一日約七千件。現在でも検査能力は一万二千件あり、検査自体にはまだ余裕はある。
 一方で、検体を採取する「帰国者・接触者外来」への受診者は三月初めから三月末にかけて三・七倍に膨らんだ。それでも外来施設は今月十二日時点で、三月初めの一・七倍に当たる千百五十九施設にとどまっている。
 徳田氏は「感染が拡大し、外来がパンク状態。その外来につなげる保健所もパンクしている。保健所から許可をもらって検査するのは限界に来ており、医療崩壊目前だ」と警告。休校中の学校の校庭を活用するなどして、検体を採取する場所を増やすよう提言する。
 厚生労働省の担当者は「重症化しやすい人は医師の判断で検査につながるケースは多い。ただ、軽症の人を検査しないということではなく、その後の症状を見ながら総合的に判断している」と話す。 (井上靖史)

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