金正恩氏、弾道ミサイルで住民の心つなぎ留める 経済の低迷深刻 15日に一族記念日

2022年4月15日 06時00分

13日、平壌で、竣工した普通江のほとりの住宅街を歩く金正恩朝鮮労働党総書記(手前右)。手前左はアナウンサー、リ・チュンヒ氏=朝鮮中央通信・共同

 北朝鮮は15日、金正恩キムジョンウン朝鮮労働党総書記の祖父である故金日成キムイルソン主席の生誕110年(太陽節)を迎える。正恩氏は、党トップに就いて10年で100発以上の弾道ミサイルを発射するなど軍事力の強化に注力。長引く経済制裁や、新型コロナウイルスの流入を防ぐための国境封鎖で経済への打撃が深刻な中、住民の支持をつなぎ留めようと腐心している。(ソウル・木下大資)

◆看板アナに新居贈る

 北朝鮮メディアは14日、正恩氏が平壌ピョンヤンを流れる普通江ポトンガン沿いに建てられた住宅街の完工式に出席し、テープカットをしたと報じた。
 建設地は、金日成氏がかつて住んだ場所だという。「首領様は自分の邸宅が撤去された代わりに愛国者や功労者たちの幸せあふれる住まいができたことを知れば喜ぶだろう」と、正恩氏。朝鮮中央テレビで長年、重要ニュースを伝えてきた看板アナウンサー、リ・チュンヒ氏に新居を贈った。
 平壌では11日にも「松花ソンファ通り」に建てられた80階建てのタワーマンションの竣工シュンコウ式が行われた。この日は、正恩氏が党第1書記に就任してから10年の節目で、自らの業績を大々的にアピールした。
 正恩氏は昨年1月、党規約を改定。核開発と経済発展を同時に追う「並進路線」を外し、必要な物資は国内でまかなう「自力更生」を加え、経済制裁下で経済発展に注力する姿勢を示した。住宅建設は特に力を入れる分野だ。

◆貿易総額は7割以上減少

 しかし、多くの国民に住宅供給の恩恵を行き渡らせるのは限界がある。北朝鮮はコロナ禍で2年にわたり国境を封鎖。2020年の北朝鮮の貿易総額は前年から73%も減少した。
 住民に忍耐を強いる中、体制の安定に欠かせない、もう一つの成果が軍事力の強化だ。正恩氏はこれまでに100発超の弾道ミサイルを発射。父親の故金正日キムジョンイル総書記が17年間で16発だったのと比べると、ミサイルへの傾倒は明らかだ。
 先月24日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」と主張するミサイルを発射した際は、正恩氏が現地指導する様子をミュージックビデオ風に仕立てた映像を国営メディアが流した。「国防力を目に見える形で示すから、北朝鮮の住民は生活が苦しくても自尊心を感じる」。ある脱北者は、正恩氏が兵器開発の目標や成果を積極的に公開する意図を、そう解説する。

◆日米韓は7回目の核実験警戒

 韓国軍は、北朝鮮が太陽節の15日に平壌で数万人規模の記念行事を開く兆候を把握している。正恩氏の執権10年と重なる太陽節を盛大に祝うことで、3代続く金一族の統治の正統性を強調する構えだ。
 また、日本や米韓両国は、北朝鮮が17年以来7回目となる核実験に踏み切る可能性も警戒する。
 次の核実験は「核弾頭の小型化」が目的との見方が強い。小型化に成功すれば、核弾頭を短・中距離弾道ミサイルに搭載し、在韓・在日米軍基地などを攻撃できる。ICBMに複数の核弾頭を搭載する「多弾頭化」も可能になり、米国にとっての脅威はさらに高まる。
 国連安保理で拒否権を持つロシアがウクライナに侵攻し、北朝鮮への追加制裁が決議される見込みは薄く、核保有国の既成事実化はさらに進展しかねない。

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