ふるさと鉄道 春の便り

2022年4月18日 07時05分
 通勤通学の手段として、行楽の足として活躍する地方の鉄道。今日は埼玉県と静岡県から、ローカル私鉄の春の話題をお届けします。

◆2人の門出 SLで祝える<秩父鉄道・埼玉>

昨年6月の模擬結婚式。秩父鉄道三峰口駅で2人の名前の入った記念のヘッドマークを手に記念撮影=秩父鉄道提供

 蒸気機関車(SL)で二人の結婚の思い出をつくりませんか−。秩父鉄道(本社・埼玉県熊谷市)はこの春から、「SLパレオエクスプレス」の客車を貸し切って結婚式や披露宴を催すプランの販売を始めた。
 パレオエクスプレスは、一九四四年製造のSL「C58363」。毎年三月中旬〜十二月上旬の土日祝日に運行し、観光客らの人気を集めている。
 結婚式を企画したのは、同社企画部主任の福田有理恵さん。コロナ禍で式や披露宴を中止したり縮小したりするカップルも多いと聞き「新しい形の思い出づくりに役立てればと思った」と話す。若手女性社員らと練り上げ、昨夏、社内結婚した社員が模擬結婚式を実施。手応えを感じ、事業化が決まった。
 熊谷−三峰口(秩父市)間の約二時間四十分、客車一両の貸し切りと写真撮影で税込み四十三万九千六百二十五円。秩父、熊谷のホテル、洋菓子店、美容室の協力も得ており、別料金で客車内でフルコース料理を楽しんだり、ホテルでの披露宴と組み合わせることもできる。
 駅や車両基地での写真撮影だけのプランは同三十八万四千六百二十五円。
 両プランとも、二人の名前が入ったSLヘッドマーク、結婚証明書をプレゼント。着付け、メーク代は料金に含まれている。制服や制帽の無料貸し出しも。
 福田さんは「昭和、平成、令和と歴史を刻んできたSLでの思い出を、二人のスタートにしてほしい」と話す。問い合わせは、秩父鉄道企画部=電048(523)3313=へ。 (渡部穣)

◆鉄道愛込め、吉原駅アナウンス<岳南(がくなん)電車・静岡>

静岡県富士市内を走る岳南電車=岳南電車提供

 静岡県富士市を走る岳南電車の起点・吉原駅で、この春から、タレント響丈(ひびきじょう)さん(44)による自動アナウンスが流れている。穏やかで温かみのある声で電車を迎え、送り出している。「昔の地方私鉄の味わいが残る岳南に携われてうれしい」と喜ぶ。
 京王電鉄で十年以上、運転士や車掌を務めた響さんは六年ほど前、鍛錬を重ねていた発声技術を生かして転身。ナレーターやラジオ出演、ボイストレーナー業に励み、ユーチューバーとして鉄道絡みの発信も続けている。鉄道事業者とテツ(愛好家)の両者の気持ちが分かる存在として注目を集めている。
 全長九・二キロの私鉄、岳南電車は工場地帯を夜間に走る「夜景電車」といった独創的なイベントを仕掛けている。公式ツイッターでは、親しみやすい文体でまめに発信し、ファンやフォロワーを増やしている。響さんも岳南の柔軟な姿勢に共感し、貸し切り電車などの企画を実現するうちに社員と親しくなった。そうした縁から社員向けの発声技術の講師を依頼され、吉原駅のアナウンスに至った。
 ローカル鉄道を取り巻く環境は厳しい。岳南も富士市から毎年補助金を受けるなど順風ではないが、響さんは「岳南はフットワークが軽く、自由さが魅力。少しでも力になれれば」と楽しみながら応援する。
 千葉県の銚子電鉄などとも交流があり、地方鉄道への思いは強い響さん。「鉄道は地域の資産。線路をはがすと二度と戻らないので残してほしい」と願う。 (藤浪繁雄)

自動アナウンスを務める、元鉄道マンの響丈さん

 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。

関連キーワード


おすすめ情報

TOKYO発の新着

記事一覧