「国の理不尽な用地補償を知って」放射能汚染土の中間貯蔵施設巡り企画展 福島・いわき湯本

2022年4月18日 08時00分
≪わが町の天地に満つる放射能を固めて捨つる手だてはなきか≫
 福島県大熊町から避難し、いわき市に住む元高校教員の吉田信雄さん(85)は歌集「故郷喪失」でこう詠んだ。自宅は東京電力福島第一原発の南1.5キロ、除染で出た汚染土を最長30年間保管する「中間貯蔵施設」内にあった。
 中間貯蔵施設は、原発を囲むように大熊町と双葉町にまたがって整備が進む。広さは1600ヘクタール。バリケードで遮られた帰還困難区域で、許可なく立ち入ることはできない。

福島第一原発を囲むようにして汚染土を一時保管する中間貯蔵施設が広がる=福島県大熊町で、本社ヘリ「おおづる」から

 この用地補償を巡る政府との交渉で問題点を指摘してきたのが、地権者有志でつくる「30年中間貯蔵施設地権者会」。その活動に焦点を当てた企画展が、福島・いわき湯本温泉「古滝屋」9階の原子力災害考証館で開かれている。
 「国による理不尽な用地補償を知ってほしい」と、地権者会の会長、門馬好春さん(64)=東京都渋谷区=は話す。大熊町の実家は原発までわずか200メートル。中間貯蔵事業に賛成であるものの、故郷の土地利用で、政府が被災者をだますようなやり方をしていることに我慢がならない。
 環境省との交渉では、土地を国に貸す場合の補償が国のルールにない方法で算定されたことを問題視してきた。売却して国有地化に応じた方が有利な補償になっているため、2045年までの汚染土の県外搬出という約束が果たされずに、最終処分場になるのではという懸念もある。

展示内容を説明する門馬好春さん。会場には、政府との交渉経緯や問題点を一覧できるパネルが掲示されている=福島県いわき市の原子力災害考証館で

 門馬さんは「国主導の復興政策ではなく、町民が考えないといけない。将来同じようなことが起きた場合、私たちの活動が前例となれば『これはおかしい』と言える」と次世代への思いを語る。
 会場には、交渉の経緯や問題点をまとめたパネルや東京新聞原発取材班の記事もある。
 古滝屋はJR常磐線湯本駅から徒歩8分。午前10時~午後4時、入館無料。問い合わせは、電子メール(furusatondm@gmail.com)で。

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