生理の苦痛軽減「低用量ピル」 働く女性、活躍の助けに

2022年4月18日 10時27分

オンラインのピル処方アプリ「スマルナ」で届くピルのキット

 つらい腹痛、仕事に集中できないほどの出血量…。毎月の生理は多くの女性の悩みの種だ。負担を軽減するため、働く世代を中心に広まりつつあるのが「低用量ピル」だ。避妊目的で飲む印象が強く、日本での服用率は欧米に比べて低い。一方で、女性が自ら生理をコントロールし、自分らしい生活を送ることは「ジェンダー平等」の第一歩にもつながるとして、注目されている。 (熊崎未奈)
 助産師の中浜摩美さん(30)は大学時代、重い生理痛に悩んでいた。痛みが強い時は一日中、布団にくるまって寝込むほど。二十歳の頃、婦人科で子宮内膜症と診断を受け、低用量ピルを処方された。
 服用後、ひどい生理痛は治まり、周期も安定した。総合病院に勤めてからは、出血量の多い初日や二日目が休日に当たるよう、薬を使って生理が来る日を調整した。勤務中は急なお産もあり、いつナプキンを交換できるか分からない。「ピルを飲むことで、自分の体をコントロールしている安心感があった。いつ生理が来るか分からない不安から解放された」と話す。
 低用量ピルは、女性ホルモンを化学的に合成した成分が含まれる薬。飲むと排卵が抑制され、避妊効果が高まるほか、生理前の不調が起きにくくなる。子宮内膜も薄くなって、出血量や生理痛も抑えられる。

■日本は普及遅れ

 日本で承認されたのは一九九九年。最も早かった米国に遅れること四十年、国連加盟国では最後だった。二〇一九年の国連人口部の統計では、婚姻・同居関係にある女性の服用率は0・9%で、先進国の平均24・6%を大きく下回る。
 「イーク表参道」(東京)副院長で産婦人科医の高尾美穂さんは、普及に時間がかかる理由の一つに、四十〜五十代にとってピルが身近でないことを挙げる。そのため、自分の娘にも勧めない人が少なくない。
 もう一つは、薬や生理に対する知識が不足していることだ。体重の増加やむくみなどのトラブルや血栓症のリスクといった副作用について知った上で「得られるメリットの方が大きいと思えば選択肢に入れてほしい」と話す。また、生理が妊娠する準備であると分かっていれば、妊娠を希望しないときに排卵を起こし、痛みを伴う生理を経験することを「意味がないと考えるのも合理的」と話す。

■オンライン処方

 最近はオンラインでのピル処方サービスも広まる。大阪市のIT企業「ネクイノ」が運営するアプリ「スマルナ」は五十四万人が登録。最初にテレビ電話やチャットで医師の診察を受け、その後は月に一回、自宅にピルが届く仕組みだ。送料などを含め、利用者の約八割が月に四千〜五千五百円を支払っている。担当者は「婦人科に行くことに心理的、地理的なハードルを感じる人もいる。アプリを通じて女性の選択肢を増やせれば」と話す。
 ピルは働く女性のパフォーマンスを向上させ、男女間の格差を埋める一助になると期待される。ただ、高尾さんは「ピルを飲めば、生産性が上がってばりばり働けるよね、ということではない」と警鐘を鳴らす。
 そもそも女性にとって生理は、男性にはない「困り事」。ピルはいわば、困っている人と、いない人のスタートラインをそろえるものだ。高尾さんは「誰かの困り事を補うのは当然、と考えることが大切。そうすれば(男女とも)みんなが同じように、やりたいことを実現できる社会になるのでは」と話す。
<低用量ピル> 卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を合成した成分を含む薬。処方には医師の診察が必要。避妊を目的に自費負担で処方されるOCと、月経困難症や子宮内膜症の治療を目的として保険適用されるLEP(レップ)がある。いずれも、生理痛や月経前症候群などを緩和する効果が見込まれる。

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