「デフリンピックで会おう」 ウクライナの参加費、日本陸上選手ら寄付呼びかけ 4年に1度のろう者スポーツ大会

2022年4月19日 06時00分
 来月1日にブラジルで開幕するろう者(聴覚障害者)のスポーツ大会「デフリンピック」に、ロシアの侵攻を受けているウクライナの選手が参加できるよう日本デフ陸上競技協会が寄付を募っている。ロシアと、ロシアの同盟国のベラルーシの選手は出場できず、戦禍を受ける中の開催となるが、五輪・パラリンピックと並ぶ4年に1度の大舞台。多くのよきライバルたちと戦いたいと、日本の選手たちも協力を呼び掛けている。

ウクライナ選手への一定額以上の支援者に送るTシャツ

 協会によると、ウクライナの陸上チームは40人が出場予定だった。ロシアの侵攻で統括団体の事務所が隣国ポーランドに避難するなどし、資金が足りず、予定の半数しか出場できない恐れがあるという。
 3月下旬に協会スタッフがブラジルへ会場視察に赴いた際、大会組織委員会のほか、多くのウクライナ選手の避難先となったドイツのスタッフらと話し合い、分担して支援しようと決めた。日本の協会が担うのは選手とコーチ計5人の渡航費で、100万円を目標に掲げる。

2019年の世界ろう者室内陸上選手権で銀メダルの岡田海緒選手㊧と金メダルのロシア選手㊥、銅メダルのウクライナ選手=エストニアで(日本デフ陸上競技協会提供)

 ウクライナの選手と競い合ってきた日本の選手も心を寄せる。中距離の岡田海緒選手(24)=三菱UFJリサーチ&コンサルティング=は、3年前の国際大会で銀メダルを獲得。優勝したロシア選手、3位のウクライナ選手と表彰台に立ち、ウクライナ選手と「デフリンピックで会おう」と約束した。今回の寄付について「使い道が明確な支援。協力してほしい」と訴える。
 短距離の佐々木琢磨選手(28)=仙台大職=は2月下旬、ライバルのウクライナ選手に「大丈夫?」とメールを送った。2日後に首都キーウ(キエフ)にいると返事があったが、その後ポーランドに逃れ、「デフリンピックには何とか参加したい」と連絡があったという。
 一方、ロシアとベラルーシの選手が出場できないことに、棒高跳びの滝沢佳奈子選手(22)=MSD=は複雑な思いもにじませる。2016年に初めて出場した国際大会で、審判が国際手話で説明する内容が分からない時に助けてくれたのは、ベテランのロシア選手だった。今も憧れている相手の心境を思い、「選手は悪くない」と漏らした。

昨年8月、世界デフ陸上選手権の200メートルで2位となり3位のウクライナ選手と記念撮影した山田真樹選手㊧=ポーランドで(日本デフ陸上競技協会提供)

 17年にトルコで開かれた前回デフリンピックで三つのメダルを獲得した短距離の山田真樹選手(24)=渕上ファインズ=は「デフリンピックに出場し、国際ニュースに関心を持つようになった。いろんな国の人と交流し、視野が広がった」と話す。今回は国際情勢が揺れ動く中の開催となるが、「相手の文化も知る機会になる」と、参加の意義を訴える。
 ウクライナ選手への支援は5月15日の閉幕まで受け付ける。3万円以上の支援で、協会オリジナルTシャツを返礼で送る。出場にあたり、自己負担が大きい日本選手への支援も募っている。詳細は協会ウェブサイトから。(神谷円香)

 デフリンピック 五輪やパラリンピックと同様、4年に1度夏季・冬季大会が開かれる世界規模のスポーツ大会。1924年に世界初の障害者スポーツ大会としてパリで始まった。国際オリンピック委員会(IOC)に名称使用を認められ、2001年から正式に現在の名称に。昨年12月に開催を予定していた夏季ブラジル大会は新型コロナウイルスの影響で今年5月に延期された。今大会は陸上や水泳、サッカー、自転車など20競技を実施し、日本からは選手95人を含め選手団149人が参加する。日本は25年の次期夏季大会の招致を目指している。聴覚障害はパラリンピックの参加対象外。


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