「壁ドン」教育が「恋愛弱者」を救う? 内閣府の研究会で識者が提案、波紋広がる

2022年4月19日 06時00分
 内閣府の研究会で飛び出した提案が波紋を広げている。恋愛の支援策として「壁ドン」を教えてはどうか、というのだ。少女漫画やドラマで目にする「壁ドン」。国の旗振りで現実世界でも繰り広げることになるのか。(特別報道部・中沢佳子)

◆舞台は「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」

 「『恋愛弱者』にもチャンスを平等化するために、支援が必要かも」
 7日にあった研究会。配布資料でそう記したのは、メンバーの一人で成蹊大の小林じゅん教授(社会学)。人びとの間には「恋愛格差」があり、弱者を支える必要性があると訴えたうえ、「教育に組みこむ 壁ドン・告白・プロポーズの練習、恋愛ゼミ」と提案した。
 この会合は「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」。昨年5月から11回の会合を重ねてきた。現在のメンバーは民間シンクタンクの研究員や大学教員ら6人。未婚の増加、平均初婚年齢の上昇、離婚の増加といった社会の変化の中、課題を明らかにする。小林氏は恋愛格差を課題と捉えたらしい。真意を尋ねるため、大学を通じて取材を申し込んだが、18日夕までに返答はなかった。
 ちなみに同氏が持ち出した「壁ドン」とは、壁を背にした女性に向かい、男性が壁に手を突いてささやく行為のことだ。2009年に描かれた少女漫画で火が付き、他の漫画やアニメ、ドラマに広がったとされる。14年の流行語大賞でトップ10入りし、15年には日韓交流イベントで体験会も催された。

◆普通の人が無理してやっても、不自然

 とはいえ、「壁ドン」を教育するのはどうなのか、というのが率直な疑問だ。強引なアプローチゆえ、嫌悪感を抱く人がいる。ネット上を見渡すと「強制的に練習をやらされるなんてことになったら、目も当てられない」「こんなことに税金使うのやめて」といった投稿が相次いでいた。
 そもそも壁ドンが恋愛に役立つのか、と根源的な問いを投げかけるのがコラムニストの辛酸なめ子さん。「漫画とかで見るもので、現実で意識してやるものじゃないですよ。普通の人が無理してやっても、不自然。むしろ恋愛を終わらせます。恋愛経験の少ない人の発想かな、と思います」と静かな口調で突き放した。
 どう議論されたのか、詳しく知りたいところだが、会議は非公開。議事録を後日公開している。次回から報告書のまとめ作業に入るという。果たして政府は壁ドン教育を推奨することになるのか。
 内閣府男女共同参画局推進課の担当者に尋ねると、「(小林氏の)個人的見解と提案で、政府の公式見解ではない。恋愛も結婚も、個人の自由な意思決定。報告書は、特定の価値観を押しつける内容にはしない」と何度も繰り返した。

◆報告書の骨子案は突っ込みどころ満載

 となるとこの先、報告書の中身はどうなるか。
 7日に示された骨子案では「未婚化・晩婚化の進行」「女性の労働」「ひとり親世帯の状況」「家事・育児・介護」「事実婚」「中年未婚者」などと多岐にわたる項目が羅列された。
 「結婚と家族の変化と現状をデータから把握するのが目的」と内閣府の担当者は語るが、富山大の斉藤正美非常勤講師(社会学)は「内容が総花的で何がしたいのか分からない」と首をかしげ、一連の研究会の動きに半ばあきれる。
 「突っ込みどころばかり。男女共同参画社会の実現に向けて考えるべきことがブレている」

内閣府の研究会で用いられた資料

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