男性の前立腺がん 50代以降に増加 血液検査で早期発見 初期は自覚症状なく

2022年4月19日 09時20分
 2月に75歳で亡くなった俳優の西郷輝彦さんが患っていた前立腺がん。2018年に新たに診断を受けた患者は9万2000人を超え、男性のがんでは最も多い。初期は自覚症状がなく気付きにくいため、人間ドックなどで血液を採取して調べる「PSA検査」が重要だ。加齢に伴って患者が増えることから、医師は「50代以降は要注意」と訴える。 (細川暁子)
 前立腺は膀胱(ぼうこう)の下にある臓器で、真ん中を尿道が通る=イラスト。厚生労働省によると二〇年の死亡者数は一万二千七百五十九人で、高齢化や食生活の欧米化に伴い、〇〇年の七千五百十四人から急増している。
 名古屋大泌尿器科学准教授の加藤真史さん(51)によると、通常ゆっくりと進行し、初期は痛みなどの自覚症状がないのが特徴。「西郷さんの死後、『自分は大丈夫か』と心配する声をよく聞く」と言う。患者は五十代から増えるため「まずはPSA検査を受けてほしい」と呼び掛ける。
 PSAは前立腺でつくられるタンパク質。精子の運動性を高める役割があり、ほとんどが精液中に分泌される。しかし、前立腺に問題があると血液中に漏れ出す量が増加。自治体のがん検診や人間ドックなどの血液検査で分かるPSAの値が高くなる。ただ、PSA値が高くなる原因はがんだけでなく、前立腺肥大や前立腺炎の可能性も。血液一ミリリットル中の濃度が四〜一〇ナノグラムが「グレーゾーン」で、精密検査をすると二〜三割にがんが見つかるとされる。
 愛知県の男性(72)は五十代の時から約十五年間、人間ドックで毎年、PSA値を調べていた。二〇一七年に四・六となり、初めてグレーゾーンに。経過観察を続けていたが、昨年四月には二五まで上昇。精密検査を受けた結果、前立腺がんが座骨に転移し、ステージ4と診断された。
 精密検査は、肛門から指を入れて前立腺の大きさや硬さを調べる直腸診、超音波、MRIなど。がんが疑われる場合は組織の一部を採って調べる生検で、診断を確定させる。男性は「グレーゾーンなら大丈夫と逃げていた」と悔やむ。
 治療には手術、放射線治療、ホルモン療法などがあり、がんの悪性度や患者の希望、年齢、副作用などに応じて決める。
 がんが前立腺内にとどまっている場合は、手術か放射線治療が中心。手術は精のう、精管の一部とともに前立腺を摘出し、膀胱と尿道をつなぎ直す。術後は精液が出なくなる。尿道を締める筋肉の機能が低下し、尿漏れしやすくなる人もいるが、加藤さんによると多くは半年ほどで改善する。
 放射線治療には、弱い放射線を出すカプセルを前立腺に埋め込む「小線源療法」や、放射線を腫瘍に集中的にあてる「強度変調放射線治療(IMRT)」がある。小線源療法は四日程度の入院、IMRTは二カ月ほどの通院が必要だ。副作用で排尿障害や勃起障害が起きることがある。
 前立腺がんは、精巣(睾丸(こうがん))でつくられる男性ホルモンで増殖する。他の臓器への転移がある場合はホルモン療法を実施し、男性ホルモンの分泌や働きを抑える注射をする。精巣を摘出することも。副作用としては、勃起障害や体のほてりといった女性の更年期障害に似た症状が出ることがあるという。
 全国がんセンター協議会が二一年に公表した調査結果によると、がん以外の病気や事故で亡くなる影響を除いた前立腺がんの十年相対生存率は99・2%と、がんの中で最も高い。加藤さんは「早めの発見と治療が欠かせない」と話す。

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