国産コロナワクチン、なぜ世界から大きな遅れ?「今がラストチャンス」狙う野心的な難題

2022年4月20日 06時00分
 米ノババックス社製の新型コロナウイルスワクチンが承認された。国内でのワクチン承認は4例目だが、すべて海外メーカーの製品だ。日本の複数の製薬会社もワクチン開発を進めているが、いまだ完成していない。政府や製薬会社が長年ワクチンへの投資を避けてきた結果、世界と大きく差がついた。政府はワクチン開発の司令塔を発足させ、遅れを取り戻そうと必死だ。(森耕一)

記者会見で報道各社の質問に答えるカタリン・カリコ氏=15日、東京都千代田区の帝国ホテルで

◆わずか10カ月に見えても

 「今回のパンデミックが初挑戦ではなく、ずっとRNAを使ったワクチンの研究をしてきた」。新型コロナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン開発の中心となる発見をした独ビオンテックのカタリン・カリコ上級副社長は14日、都内での講演で語った。
 カリコ氏は1990年代にRNA研究を始め、近年はがんや感染症のワクチンへの応用を研究していた。新型コロナウイルス発生後はすぐに技術を転用し、同社とファイザーはわずか10カ月でワクチンを実用化させた。長年の積み重ねがあったからこその成果だ。

◆基盤がない、支援もない

 一方、日本ではその積み重ねが欠けていた。90年代に、国が接種を進めていたワクチンの副反応が社会問題となって訴訟が相次いだ。国はワクチン政策に消極的になり、製薬会社も開発や研究者育成をやめた。
 大学でも事情は同じ。大阪大の宮坂昌之招へい教授は「免疫学などの研究者も、予算を付けてもらえないのでワクチン研究は難しかった」と話す。
 その結果、新型コロナワクチンでは国内の塩野義製薬、第一三共、KMバイオロジクスが開発に乗り出したものの、まだ中盤〜終盤に当たる治験の段階だ。国内は大半の人が接種済みで治験が難しいため、海外での治験頼みなのが現状だ。
 内閣府の担当者も「日本の製薬会社にはワクチン開発の基盤がない。国も支援してこなかった。反省しないといけない」と認める。
 状況を変えるため、国は3月、医療研究を支援する日本医療研究開発機構内にワクチン開発の司令塔となる組織SCARDA(先進的研究開発センター、スカーダ)を新設した。医薬品開発では異例の規模となる1500億円を投じて大学、企業の開発を支援する。

◆最先端への大きなハードル

 まずコロナ関連の研究から公募を始めた。担当者は「現在のワクチンには、免疫効果が長続きせず、超低温の保存が必要など課題もある」と、5年で現状を上回るワクチン開発を目指す。今と同等のものでは、海外のワクチンが先行した現状では広く使われる可能性は低いからだ。
 世界の研究者が目指すのが、さまざまなコロナウイルスに効果を発揮するワクチンの開発だ。新型だけではなく他のコロナにも広く共通する特徴に反応する抗体を作るのが鍵で、変異株や新型ウイルスにも素早く対応できる。先行する欧米でもまだできていない難題だが、日本はこの最先端の課題にも挑む。
 ハードルは高く遅れを取り戻すのは簡単ではない。だが、今のままでは、別のコロナや新型インフルエンザなどが流行したとき、再び海外ワクチン頼みになりかねない。宮坂氏は「海外で新型肺炎(SARS)や新型インフルエンザが発生したとき日本政府は動かなかった。いま体制をつくれなければ2度と挽回のチャンスはない」と指摘する。

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