<ふくしまの10年・お先に花を咲かせましょう> (6)傷つけるのも人間

2020年4月7日 02時00分

馬の世話をする小林友子さん(左)と宮下季子さん=福島県南相馬市小高区で

 相馬・双葉地方には騎馬武者が野を駆ける「相馬野馬追(のまおい)」という伝統行事がある。騎馬武者役を務める地元の人々は自分の馬を持っていたりして、この地方で馬は身近な存在だ。
 双葉屋旅館(南相馬市小高区)の女将(おかみ)小林友子さん(67)は三年前、一頭の馬を買った。馬にゆかりの深い土地で、観光馬車を走らせることができないかと考えている。
 小林さんが預けている馬の世話に行くというので、小高西部の山間部にある大富地区の厩舎(きゅうしゃ)みちくさに連れていってもらった。広島県から移住した女性が、被災馬を預かって世話をしている。原発事故前は牛を飼育していた牧場だった。
 旅館で働く宮下季子(ひでこ)さん(62)も一緒に手伝いに行った。敷きわらの交換をした帰り道、宮下さんが同じ大富地区で牛を飼育していた親戚の話をしてくれた。原発事故ですべての牛を殺処分せざるを得なかったという。猫は連れていったが、数日で死んでしまった。避難先を転々とするうち、がんになったという。
 「震災前、おじさんが牛を売りに行って、うまくいけば牛肉のおみやげがあった。新鮮でおいしかった。川にはサケも上がってきたし、自給自足ができた」。宮下さん自身も千葉や東京に避難していたが、その間は「時間が止まっていた」。小高に戻ってやっと時計の針が動きだしたという。
 「よそで福島の人は『福島から来た』って言えなくなっている」と小林さんは嘆く。「賠償金をもらってるんだから帰ったら」などと言われた人もいるという。心ない言葉は避難生活で疲れている人たちの心をさらに追い詰める。
 ボランティアなどで人を助けようとするのも人間。傷つけるのも人間だ。人間という存在の多面性がつらくなる。

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