ロシアのウクライナ侵攻から逃れた人々を「準難民」に指定検討 真の狙いは送還停止なくすこと?

2022年4月20日 12時43分
 ロシアのウクライナ侵攻から逃れた人たちを、難民に準じて保護する「準難民」。岸田文雄首相が検討する考えを示したが、受け入れ増を目指す制度の詳細は明らかにされていない。「難民鎖国」と批判されてきた入国管理行政は、これで変わるのか。政府は長期収容問題で廃案になった入管難民法改正案も一緒に成立させる方針で、支援者らからは「火事場泥棒」との声も上がっている。(北川成史、望月衣塑子、山田祐一郎)

◆政府、条約上の難民として保護できない立場

ウクライナを逃れ、日本の政府専用機でポーランドから来日した避難民ら=5日、羽田空港で

 「難民と準難民? 違いが見えませんねえ」。ウクライナ避難民の学費を無料にする方針の京都民際日本語学校(京都市)の幹部は戸惑いを口にした。
 「準難民」とは何か。入管庁に問い合わせると、担当者は「私たちは『準難民』とは言ってない」「難民より劣るイメージを抱かれる」と不満を表した。昨年、名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡した事件の影響か、外の目に敏感な様子だ。
 とはいえ、岸田首相も13日の国会で「難民条約上の理由以外により迫害を受ける恐れのある方を適切に保護するため、難民に準じて保護する仕組みの検討を進めている」と述べている。背景には、ウクライナのような紛争地からの避難民は、難民条約上の難民として保護できないという日本政府の立場がある。
 難民条約上の難民には、(1)人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に(2)迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有する(3)国籍国の外にいる(4)国籍国の保護を受けることができない―という4条件がある。無差別的な攻撃が広がる紛争地から逃れて来た人の場合、(1)にそぐわない、というわけだ。 

◆厳しい認定…「制度上は一歩前進」

 法務省や入管庁幹部らへの取材によると、「準難民」は、昨年廃案となった入管難民法改正案の「補完的保護対象者」に沿った内容で検討されている。
 (1)を除き、(2)~(4)を満たしていると認定された「補完的保護対象者(準難民)」を難民と同様に扱う。5年間の定住者の在留資格を与え、就労や国民健康保険への加入、家族の呼び寄せを可能とし、日本語習得のプログラムも用意する。
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の滝沢三郎・元駐日代表は「制度上は一歩前進」と述べる。滝沢氏によると、東西冷戦下でできた難民条約は、共産圏で政治的迫害を受けた人らの亡命を念頭に置いていた。冷戦が終わり、世界各地で紛争を逃れた避難民に対応しきれなくなっていた。
 「準難民」は欧州などの避難民受け入れと呼応した動きだが、滝沢氏は運用が焦点になると指摘する。日本の難民認定数は2020年は47人。年間1万人を超える欧米諸国より極端に少ない。迫害の恐れなどについて、認定基準が厳格なためだ。
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