クライミング愛好家らに人気のスポット「魔王ルート」で何が… 南伊豆町の3人転落溺死事故の現場とは

2022年4月20日 10時56分
 静岡県南伊豆町妻良めらの吉田海岸で今月8日、ロッククライミング中とみられる国際山岳ガイドの篠原達郎さん(66)=埼玉県新座市=と静岡県富士市の親子の計3人が海に転落し、溺死した。現場付近は「魔王ルート」と呼ばれるクライミング愛好家らの人気スポット。ただ、一帯は急峻きゅうしゅんで県警の捜査員が入れず、事故原因の捜査は難航している。再発防止のため、何ができるのか。事故を検証した。(佐々木勇輝)

 南伊豆町の男女3人転落溺死事故 南伊豆町妻良の吉田海岸で8日、富士市中野の石谷師子さん(78)、徳一さん(48)親子と国際山岳ガイドの篠原達郎さん(66)=埼玉県新座市=が崖から海に転落し、溺死した。現場は「魔王ルート」と呼ばれるロッククライミングの人気スポット付近。3人は体をロープでつなげた状態で発見され、服装などからロッククライミングをしていたとみられる。

◆崩れやすい岩

 「あそこは本当に危険な場所だよ」。現場となった吉田海岸近くで30年ほど旅館を経営する吉田克規かつのりさん(74)は言う。同海岸は町役場から車で西に約20分、険しい山道の先に突如現れる。魔王ルートはさらに海岸西の急斜面を越えた先にある断崖絶壁。けもの道を歩いて近づき、見上げると足がすくんだ。
 吉田さんによると、クライミング客が魔王ルートを初めて訪れたのは5〜6年前。それ以前も、付近の岩場では釣り人の事故が起きていた。「7〜8メートルの岩が、次の日には崩れて海に落ちていたこともある」。岩がもろく崩れやすい「魔王ルート」付近には、地元住民は近づかない。
 事故原因の調査のため、静岡県警下田署は3人の転落場所や詳しい状況を調べているが、現場は海に面した険しい断崖で近づくのも難しい状況だ。

事故現場とみられる「魔王ルート」は、舗装された浜辺(右手前)の奥にある急斜面の反対側にある=静岡県南伊豆町で

◆整備され人気

 一方、伊豆のアウトドアガイドで、自身も魔王ルートを登った経験がある根岸尚宗なおひろさん(41)は「安全なルートのはずだ。山岳ガイドと一緒に複数で登ることも想定し、開拓された」と説明する。岩の風化も考慮して最新のボルトが各所に打ち込まれ、難度も低いため人気が集まり「篠原さんレベルの人が落ちるなんて」といぶかった。
 日本山岳ガイド協会の武川俊二理事長(67)によると、国際山岳ガイドは世界の山を登る技術と知識を持ったプロに与えられる資格。同ガイドとして27年の経験を持つ篠原さんの事故は、業界にも「なぜ」とショックを与えている。

◆注意喚起しか

 再発防止には何が必要か。県河川砂防管理課の担当者は「(吉田海岸の)自治体による一元的な管理は難しい」と語る。海岸法に基づき、県が管理するエリアと個人所有の土地が複雑に入り組んでいるという。境界線を確認する「台帳」の記載と現場とは、波風による崖の浸食でズレがある可能性もある。境界を土地所有者と見直すための手続きは、堤防造成などの公共事業以外で行うのが難しい。
 南伊豆町の職員は「注意喚起の看板を立てるくらいしかできない」としつつも、「観光地として、皆が安全に楽しめる方法を考えたい」と話している。

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