「虐殺は事実」ブチャを現地取材した志葉玲さん語る 現地住民「ロシア兵は誰彼かまわず殺した」

2022年4月21日 06時00分
 壁に大きく開いた穴、散乱するがれき、黒焦げた人骨…。ロシア軍によるウクライナ侵攻で、「民間人の虐殺」が世界に衝撃を与えている。フリージャーナリストの志葉玲さん(46)は10~14日、ウクライナの首都キーウから約25キロ離れた郊外の都市ブチャに入り、現地を取材した。同国にとどまっている志葉さんにオンラインで話を聞いた。(望月衣塑子)

攻撃を受けたブチャの集合住宅=4月14日、ウクライナと都市ブチャで(志葉玲さん撮影・提供)

◆「拷問や無抵抗の状態で殺害された形跡」

 ブチャは、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始からまもなくロシア軍から攻撃を受け、1カ月余り支配下にあった。ウクライナ政府は4月2日、ロシア軍が撤退したブチャを解放。その後、ジャーナリストらの取材を許可した。
 志葉さんによると、ブチャで発見された遺体は当初、300余りと言われていたが、その後も新たな遺体が発見され、12日時点で400を超えたという。

破壊された一般住宅=4月12日、ウクライナの都市ブチャで(志葉玲さん撮影・提供)

 現場を確認した志葉さんは「遺体は後ろ手に縛られたまま頭を撃たれていたり、骨が折られていたりしており、拷問や無抵抗の状態で殺害された形跡があった」と語る。ロシア政府は否定するが、「誰が何と言おうと、虐殺が行われたことは事実だろう」とみる。
 地元当局に聞いたところ、遺体の約半数が屋内で見つかり、残りは屋外で発見された。「屋内に隠れていても、屋外に出て逃げようとしても、殺される状況だった。ある住民はロシア兵に自宅に押し入られ、いきなり射殺された」。ロシア兵は、その家で床にふせていた17歳の少年も撃ち殺そうとしたが、かぶっていた上着のフードだけを撃ち抜き、弾は頭に当たらず助かったという。

攻撃された集合住宅の一部は黒焦げになっていた=4月14日、ウクライナの都市ブチャで(志葉玲さん撮影・提供)

◆集合住宅にロケット弾や戦車砲

 ブチャに住むボグダンさん(48)は志葉さんの取材に、次のように振り返った。「ロシア兵は私の住む集合住宅に来て、あちこちのドアをたたき、『建物を破壊するので出てこい』と言って回っていた。怖くて部屋から出ない人もいたが、かまわずロケット弾や戦車砲を撃ち始めた」。住宅を離れたボグダンさんが攻撃後に戻ると、人が残った部屋には黒焦げになった人骨があったという。
 別の住民のワシリーさん(60)は、水を探しに外に出て殺害されたという。息子のアレクサンドルさん(30)は「父はロシア兵に見つかり、射殺された。理由なんかない。ロシア兵は誰彼かまわず殺していた」と証言。孫との海水浴を楽しむ生前のワシリーさんの写真を見せた。

破壊されたショッピングセンター=4月10日、ウクライナの都市ブチャで(志葉玲さん撮影・提供)

◆寒さに耐え、援助物資に頼る住民たち

 ブチャ解放後も、住民たちはおびえ、取材に匿名で語る人も少なくない。ガスや電気、水道などのインフラの復旧もこれからだ。志葉さんは「住民は薪を燃やして炊事をしている。まだ寒く、部屋に飾った花が凍るほどで夜は特につらいようだ。店は破壊され、営業しておらず、人々は援助物資に頼っている」と話す。

ウクライナで取材を重ねる、フリージャーナリストの志葉玲さん(本人提供)

 志葉さんは、ロシア軍が侵攻した別の地域でも同じことが起きているのではないかと懸念する。「戦争中であっても、民間人への攻撃は国際人道法で禁じられている戦争犯罪だ。プーチン大統領の責任は、国際法廷の場で追及されるべきだ」と憤った。

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