亡き人、ずっとそばに 置物などに遺骨 じわり増加

2022年4月21日 07時17分

両親の遺骨を納めた手元供養品の「地蔵」を手に語る山崎さん

 故人の遺骨を墓ではなく置物やペンダントに納め、身近な場所に置いてしのぶ「手元供養」が広がりを見せている。核家族の増加や少子化で、従来の墓に対する考えが多様化。墓に比べて費用や維持管理の手間がかからず、亡くした人が常に近くにいるように思えるのが好評のようだ。 (小田克也)

「納骨オブジェ 地蔵」=いずれも同社提供

 柔和な表情をした高さ十三センチの地蔵の置物や、木のぬくもりが伝わってくる天然木を用いたペンダント。いずれも内部に小さな遺骨を納める手元供養品だ。他に納骨お守りやミニ骨壺(つぼ)など、京都市の「博國(ひろくに)屋」では、これらの商品を一万円前後〜七万円台で販売している。

博國屋が扱う天然木が使った手元供養品のペンダント

 同社の山崎譲二社長(72)は「手元供養をする人は故人をいつも身近に感じたいという気持ちが強い人」と語る。「大切な子どもを亡くしたとか、仲が良かった連れ合いや大事に育ててくれた親を失ったとか…」
 遺骨を納めた地蔵は、たとえば自宅の机に遺影と一緒に飾り、日頃から家族が手を合わせて話し掛ける、といった使われ方をする。
 まちづくりプランナーとして全国のニュータウン造りに関わっていた山崎さんは二〇〇二年、父ががんで余命一年と知った。父との思い出をつくろうと実家によく帰省するとともに、葬儀や墓のことを考えるようになった。
 「実家には仏壇も家墓もあったが、おやじをしのびたいと思っても、お盆や正月に墓前で手を合わせるだけになりそうだ」。そう考えた山崎さんは「いつも感謝をしたい」と思い、同年に博國屋を設立。父の遺骨の一部は山崎さんが作った手元供養品に納め、家族それぞれが手元に置いた。
 手元供養には悲しみや喪失感を癒やすグリーフケアの効用があるとされ、山崎さんや趣旨に賛同する同業者らが〇五年に任意団体の「手元供養協会」を設立。全国で企画展を開くなどして広めていった。
 博國屋の年間の販売個数は三百五十から四百程度。コロナ禍の影響からか注文が増えている。同社のスタッフは「最期のお別れができずに亡くなる方も多いと聞きます。少しでも故人を感じられるよう、手元供養をされる方が増えているのでは」と推測する。
 葬儀や墓に対する意識の変化やコロナ禍などで、コンパクトな葬式や墓参りが増えており、売り上げが減少している葬祭業界では、手元供養品を取り扱う業者が増えているという。
 核家族化や少子化で、墓の維持管理の負担を少なくしようと、遺骨を墓から納骨堂などに移す「改葬」が増加。厚生労働省の統計では、遺骨を他のお墓に移す件数を含めた全国の改葬件数は一〇年度の約七万二千二百件から二〇年度は約十一万七千八百件と、十年前の一・六倍に増えた。
 山崎さんは手元供養が求められる時代と見る。
 「一人っ子同士が結婚すれば、二人で両家の墓を世話しなければならない。遠方にあれば行くのもひと苦労で、親も子や孫に負担をかけたくない」
 墓の管理は子や孫にとって、費用面でも気持ちの上でも負担になりかねない。「手元供養は新しく墓を作る場合に比べて低料金ですむ」と山崎さん。遺骨を永代供養や散骨、樹木葬にして、残りの一部を手元供養品にする選択肢もある。
 山崎さんの子ども四人は東京都内や海外で暮らしている。「おやじ、おふくろの命日には『五時に手を合わせて黙とうしよう』と(無料通信アプリの)LINEで連絡し合う。それがわが家の法要です」
 手元供養の広がりに山崎さんは「大切な故人をしのぶのは心の問題。従来のお墓やしきたりにしばられない考えの人が増えてきたと思う」と話している。

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