<ふくしまの10年・お先に花を咲かせましょう> (5)「再生、焦らないで」

2020年4月4日 02時00分

中心部のあちこちに空き地が広がる小高駅周辺=福島県南相馬市小高区で

 南相馬市小高区の避難指示は二〇一六年七月に解除された。原発事故前、小高には一万二千人以上が暮らしていた、今は三分の一に満たない。中心地の商店街も解体が進み、空き地だらけだ。砂利が敷き詰められ「売却物件」の看板などが立っている。
 「避難して一年過ぎると、雨漏りやネズミの害がひどくなって住めない状態になる。国から補助も出るので家を壊したところが空き地になっている」。解除前から町の変化を見つめてきた双葉屋旅館の女将(おかみ)小林友子さん(67)は話す。
 商店街の空き地にはソーラーパネルが並ぶ一角もある。海沿いにも山間地にも大規模な太陽光発電所が点在する。建設中のところもある。小林さんは山肌まで削ってソーラーパネルで埋め尽くしていくことには、複雑な思いを抱いている。
 「再生可能エネルギーは大事だけどメガ(大規模)じゃなくてもいいよね。自然を大事にしてほしい。放射能が山を汚染していることは分かるけど…。何十年か時間をかけて回復するっていう大きな気持ちがほしいなあ」
 小林さんは事故後、旧ソ連チェルノブイリ原発事故の被災地を何度か訪れた。放射能で汚染された地域の再生には長い時間がかかることを実感した。
 「焦らないで、今は小高に住みたい人が住めばいい。別の所に住む人たちを無理に帰そうとしないでほしい。応援してほしい」。人口を元に戻すことでなく、戻った人たちが幸せに暮らす道を探す方がいいと小林さんは考えている。
 ソーラーパネルが並ぶ光景は脱原発の一歩であることは確かだ。だが地元の人にとっては、農業などの営みが放棄され、諦めが可視化された土地でもある。一つのできごとに光と影が宿る。福島の今の姿だ。

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