五月歌舞伎座 3年ぶり「団菊祭」 菊五郎家、時蔵家 三代そろって「土蜘」

2022年4月22日 07時40分

「土蜘」に出演する(左から)萬屋の中村梅枝、小川大晴、中村時蔵と、音羽屋の尾上菊五郎、尾上丑之助、尾上菊之助=東京・銀座で

 五月の東京・歌舞伎座は恒例の「団菊祭」を開催する。第二部の舞踊「土蜘(つちぐも)」は尾上菊五郎(79)、菊之助(44)、丑之助(8つ)と、ゆかりの音羽屋三代が顔をそろえる。「五代目(菊五郎)が(河竹)黙阿弥さんに、団十郎家の『勧進帳』に匹敵するような曲にしてくれ、とつくった曲。思い入れ深い」。三年ぶりの団菊祭での上演もあり、菊五郎の言葉にも力がこもる。 (谷岡聖史)
 「土蜘」は、平安時代の武士、源頼光(みなもとのらいこう)の妖怪退治を描いた能「土蜘蛛(ぐも)」を基にした演目。僧に化けた土蜘の精が、その手始めに頼光を襲う…。激しい立ちまわりなどが見せ場で、尾上家「新古演劇十種」の一つになっている。
 音羽屋三代そろっての上演は、一九八七年に当代の菊五郎が、父の故尾上梅幸、長男の菊之助(当時丑之助)と共演して以来。菊五郎は「父の頼光は、目を開いて武将になる時の変わり目が鮮明だった。(能舞台を模した)松羽目(まつばめ)物は照明が全然変わらないが、私も(父のように)舞台を変えたい」と意気込む。

「土蜘」に出演する(左から)尾上菊五郎、尾上菊之助(当時丑之助)、七代目尾上梅幸=1987年6月撮影 ©松竹

 題材の妖怪退治は伝説だが、モデルは大和朝廷に抵抗した古代の地方豪族とされる。土蜘の精を演じる菊之助は「民族浄化の話だと思われてしまうが、その奥にあるテーマは人間は悪をつくって自分を正当化してしまうということ。悪をつくらずに平和に暮らしたいという思想が隠れている」との解釈で、「近しい民族同士のはずなのに闘っている状況で『土蜘』は非常に意味のある演目」と、現在のロシアによるウクライナ侵攻に重ねて語る。
 近代歌舞伎の確立に貢献した九代目市川団十郎、五代目尾上菊五郎を顕彰する団菊祭は、一九三六(昭和十一)年に始まった。近年は五月恒例だが、コロナ禍で二〇一九年以来となる。菊之助は「団菊祭で五月の歌舞伎座を開けられるのは、菊五郎家の一員として本当にうれしい」と話す。
 今年は中村時蔵家も親子三代で出演。三代が二組共演する点も注目で、時蔵(66)は「優雅に品良く舞いたい」といい、中村梅枝(34)は「父、息子と三人で出るのは初めて。記念の舞台になる」と感慨深げだ。
 梅枝の長男の小川大晴(ひろはる)(6つ)と、菊之助の長男の丑之助は三月に共演したばかり。この日も「会ったらハイタッチしていた。そういう関係です」と、時蔵は将来を担う幼い二人に目を細めた。親、子、孫と芸が受け継がれる様子を間近で見る舞台になりそうだ。

◆「カムカム−」出演の菊之助 「私たちの100年の物語も」

 「親子三代」の話といえば、菊之助が時代劇スターとして出演し、今春まで放送されたNHK“朝ドラ”「カムカムエヴリバディ」に重なる。「『土蜘』も三代が2組出るという、まれな舞台。私たちの100年の物語も見守って」と、菊之助は「カムカム−」ファンにも来場を促した。

◆団菊祭五月大歌舞伎

 ◇第一部(午前十一時開演)「祇園祭礼信仰記 金閣寺」(尾上松緑(しょうろく)、片岡愛之助ら)、「あやめ浴衣」(中村魁春(かいしゅん)ら)
 ◇第二部(午後二時半開演)「暫(しばらく)」(市川海老蔵、市川左団次ら)、「土蜘」(尾上菊之助、尾上菊五郎ら)
 ◇第三部(午後六時十五分開演)「市原野のだんまり」(中村梅玉ら)、「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」(尾上右近、中村東蔵ら)
 公演は五月二〜二十七日(十、十九日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000489。

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