<社説>国際卓越研究大 学問への介入が心配だ

2022年4月22日 07時45分
 政府が複数の大学を「国際卓越研究大学」に認定し、投資信託(ファンド)の運用益で支援する法案が、衆院の委員会で審議中だ。
 研究費の拡充に異論はないが、大学を選択して集中的に支援することが大学の自治を損ない、大学間格差を広げないか。「学問の自由」への介入を懸念する。
 日本の研究力低下が語られて久しい。今回の構想は、自然科学系の「注目論文」数が主要七カ国中最低の理由を大学の資金力の差に求め、十兆円規模のファンドの運用益で資金不足を補うものだ。
 ファンドは文部科学省所管の科学技術振興機構(JST)が管理し、運用は外部機関に委託する。約十兆円の財源の大半は財政投融資で、五年以内に年三千億円の運用益を見込み、一校当たり年数百億円を支援する、という。
 ただ対象校の認定には学外者が半数以上を占め、学長選考や経営方針などを策定する最高機関「法人総合戦略会議」の新設、企業からの助成などによる年3%の事業成長などの条件が課せられる。
 最大の懸念は大学自治や学問の自由への影響だ。対象校の選定には閣僚も関与し、戦略会議には政財界出身者らが起用される見通しだ。政権により会員任命が拒否された日本学術会議と同様、学問への政治介入は生じないのか。
 大学間の格差が拡大する懸念もある。対象校には大都市の国立大が選ばれる可能性が高い。その場合、国全体の研究水準の底上げにはつながらず、地方との教育格差をさらに広げかねない。
 そもそも大学に事業成長を求めることが妥当なのか。成長は民間からの集金調達力を意味するが、目先の収益に結び付かない学問分野が軽視される傾向に拍車がかからないか懸念は拭えない。
 ファンドの運用を不安視する声もある。この超低金利時代に高水準の運用益が見込めるのか。一部の官民ファンドは数百億円規模で累積損失を生んでおり、失敗すれば、負担は国民に転嫁される。
 研究力の低下は、二〇〇四年の国立大学法人化と軌を一にしている。各大学に配られる運営費交付金が削られ、研究費を得るための膨大な事務手続きで教員は研究時間が圧迫された。
 国際卓越研究大構想は同じ轍(てつ)を踏むことになるのではないか。研究力を上げるための施策を、この際、徹底的に議論すべきである。

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