<新型コロナ>裁判も続々延期 被告勾留も長期化…人権問題懸念

2020年3月31日 02時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大が、裁判にも影響を及ぼしている。傍聴席を減らすなどの対策だけでなく、裁判自体の延期が目立ってきているのだ。人の密集などによる感染を防ぐためだが、憲法で定められた、刑事被告人が迅速な裁判を受けられる権利を損なうとの指摘もある。 (大野孝志)

◆密集回避 裁判員裁判に影響

 三十日の東京地裁。法廷の入り口に「傍聴希望者の皆様へ」という紙が張られ、「傍聴席については、間隔を空けてお座りいただく」とある。都暴力団排除条例違反事件の公判では、五十二の傍聴席のうち三十三席の背もたれに、「不使用」と大きく印字されたA4判の紙が粘着テープで張られていた。二席ほどを置いて座る形だ。
 そもそも開廷できない法廷も多い。直撃を受けているのが裁判員裁判だ。東京地裁で三月に予定されていたうち、短時間で終わる判決公判以外は軒並み「期日取り消し」になり、日を改めて設定されるという。地裁の広報担当者は「裁判員を選ぶ選任手続きには何十人もの人に義務的に来てもらうことになる。感染拡大を防ぐ観点から取り消しを判断した」と説明する。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、1席ずつ間隔を空ける措置が取られた最高裁第2小法廷の傍聴席=6日

 民事訴訟も例外ではない。東京電力福島第一原発事故で避難した住民らが起こした損害賠償請求訴訟で、十三日に東京高裁で予定されていた弁論も延期された。高裁の広報担当者は「感染拡大を防ぐために重要な時期で、当事者や傍聴人らが多くなることが予想されるため、当事者の意見を聴いた上で期日取り消しが相当と判断した」と話す。

◆最高裁が期日変更などを各地の裁判所に

 全国的には最高裁が二月二十六日付の事務連絡で各地の裁判所に、期日の柔軟な変更や多くの当事者が出席する手続きでの代替手段検討を通知している。この後、さいたま、水戸、岐阜、横浜、千葉、名古屋、浜松、大津などの地裁や支部で、裁判員裁判の公判や選任手続きの期日が取り消された。東京都葛飾区の女子大学生殺人事件や、さいたま市の小学生殺害事件など、社会の関心が高い事件もある。
 名古屋地裁では四日に予定されていた覚せい剤取締法違反事件の裁判で、裁判員六人のうち三人が次々に辞任を申し出て定数に満たなくなり、判決期日が取り消された。地裁は「新型コロナの社会的影響を考慮して辞任の申し出を認めた」としている。

◆感染者出せば人事に影響?

 警察による監視を違憲として市民が岐阜地裁で提訴した民事訴訟も、十六日の期日が延期された。担当する清水勉弁護士は、各地で相次ぐ延期について「一般人である裁判員を巻き込むのは良くないという判断が働いたのだろう。裁判員制度の盲点とも言える。各地裁は『うちから集団感染を出せば人事に響く』と、自分の保身を過剰に意識しているのでは」と語る。

◆迅速な裁判受けられる権利どうなる?

 裁判員裁判の対象になる事件は、被告が勾留されていることが多い。清水氏は「民事訴訟はもともと期日の間が空いていることが多いが、刑事事件を延期されると公訴期間が不安定に長くなる。傍聴席が減るのは仕方ないとしても、延期は迅速な裁判を受ける被告人の権利を侵害している」と指摘する。
 元裁判官の井戸謙一弁護士は「短期なら良いが、新型コロナの影響はいつまで続くか分からない。ビデオリンクで公開したり、裁判員を半分ずつ選任するなど、工夫のしようはあるはず。これを機会に、裁判所の運用を思い切って変えてはどうか」と提言する。

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