日本が「難民鎖国」から「人道大国」に脱皮するには…増え続けるウクライナ避難民、520万人突破

2022年4月26日 18時00分
<ウクライナ侵攻~そこが知りたい!>

ポーランド南東部メディカの国境を通過後、市街地へのバスに乗るため列を作るウクライナ避難民ら=3月6日、谷悠己撮影

 ロシア軍のウクライナ侵攻から2カ月が過ぎ、ウクライナからの国外避難民は520万人を超えました。日本政府は日本に逃れてきた避難民の受け入れに積極姿勢を示しています。「難民鎖国」と批判されてきた日本はこれを機に「人道大国」の道を歩むことができるのでしょうか。認定NPO法人「難民を助ける会(AAR)」の会長で、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科のおさ有紀枝ゆきえ教授に聞きました。(聞き手・岩田仲弘)

長教授のポイント
・ウクライナ避難民が、前例のない規模と速さで増えているのは、人道危機の深刻さに加え、近隣諸国が一斉に門戸を開いているからだ。
・難民条約の定義は現状にそぐわなくなっている。定義を拡大して、武力紛争から逃れる人たちなどを難民として広く保護するのは世界の潮流だ。
・災害大国の日本は、避難民対応に実績がある。この経験を生かして、難民や紛争起因の避難民を積極的に受け入れる、人道大国を目指すべきだ。

難民支援の課題などについて解説する長有紀枝教授

Q ウクライナからの国外避難民の数がロシア侵攻後から2カ月で520万人を超えました。
A 現在、世界で最も多いのはシリア難民で約670万人。ウクライナ難民はすでにシリアの次に多く、流出の規模、速度とも過去に例を見ないほどです。
Q シリア難民などと比べ、どんな違いがありますか。
 難民を生み出す背景が圧倒的に違います。シリアは基本的に内戦が難民を生み出しましたが、今回はロシアが明白に国際法を違反する形で軍事介入したために発生しました。
 戦況や難民流出の様子が、世界各国のお茶の間にリアルタイムで届くことも前代未聞です。戦争の恐ろしさや難民に対する同情、共感が大きな支援活動のうねりにつながっていると思います。
Q 避難先には特徴がありますか。
A 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、世界の難民(2020年末時点)の73%が近隣国に集中しています。シリア難民を370万人と最も多く受け入れているのはトルコです。ウクライナの場合も同じ傾向ですが、これだけ多くの難民が流出しているのは、近隣諸国が一斉に門戸を開けているからで、これも今までにないことです。
 もし、ウクライナ政府と反政府勢力という形の内戦で、ロシアが絡まなければ、ポーランドがあれだけ国境を開いたかというと、疑問です。あの地域でロシアは特別な存在で、自分たちの国がもし、あんな形で蹂躙されたらどうなるか、といった危機感がそれぞれあると思います。
Q 避難民が向かう先はポーランドが約290万人と圧倒的に多い。やはり経済的に発展している国を目指す傾向があるのでしょうか。
A 決してそうではありません。世界の難民の7割が近隣国に避難した結果、受け入れ先の86%が発展途上国で、先進国はむしろ14%にとどまります。今回は、モルドバの受け入れが象徴的です。逃れてきた人の数は43万人ですが、人口比では約16%(ポーランドは約8%)に上ります。欧州最貧国の一つですが、ウクライナの戦闘地域にも近いため、今後も増える可能性があり、経済的負担をどうしていくか、課題になります。
Q 避難民が途上国であっても近隣国にとどまる最大の理由は。
 二つの理由があります。まず、女性や子どもを中心とする難民の場合、経済的にも体力的にも遠くには逃げられないということが一つ。そして、紛争が終われば戻りたいという人が圧倒的に多いからです。自分の住んだ村から一歩も出たようなことがない人たちはまず近隣に避難する。そこにもいられない場合はやむを得ずに国境を越える。遠くに逃げるにはお金が必要で、子どもたちを連れた女性やお年寄りの多くが国境沿いにとどまるのはある意味当然です。モルドバにとどまる人が多いのも、物価が安いことが背景にあります。
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