[ピラミッド] 千葉県八千代市 今沢典子(66)
2022年4月24日 07時31分
◆わたしの絵本
◆300文字小説 川又千秋監修
[若者の愚痴] 三重県四日市市・公務員・43歳 水谷貴経
「年寄りってさ、説教多いよな」
「ほんとほんと。ダルい説教ばかりでさ、聞かされるこっちの身にもなってほしいよ」
「しかもさ、ちょいちょい昔の自慢話まぜてくるのうっとうしくねぇ?」
「分かるぅ。そんなさ、うちらが生まれてない昔の話されても困るってんだよ」
「それもただの自慢じゃねぇよな。知らないと思って大げさに盛ってくるだろ? あれ、なんなんだろ」
「『昔はよくテレビの上で寝ていたもんじゃ』なんて、ウソに決まってるじゃん! あんな薄くて不安定な所でどうやって寝るってんだよ」
飼い猫たちが、何やら鳴いている。
何を話しているのやら。
何でもいいけど、仕事にならないから、パソコンのキーボードからは下りてほしい。
<評> 年配者が若者相手に得意げに語りがちなのが、昔話、自慢話、説教の三題だといわれます。でも、すでに、その内容が相手に通じなくなっているようです。人間界でも似たような例があるのでは?
[時間遡行(そこう)者] 名古屋市昭和区・主婦・56歳 菅千景
「お礼に、やり直したい過去へ戻してあげます」
公園掃除で拾った小汚い人形。
きれいに洗い、服のほつれを直した途端、不意にしゃべり出した。魔法使いの類いらしい。
(やり直せる?)
期待で胸が高鳴る。
(なら、十代か? もっと勉強しておけばって何度も後悔したよな。いっそ赤ん坊もアリか?)
あれこれ考えたが、未来を白紙に戻してまでやり直したい過去も勇気もなかった。しかし、人間の願いを叶(かな)えないと人形も役目が終わらないだろう。
よし! これで、どうだ。
「では、あなたを拾う前に戻してください」
すると人形は浮かない顔で答えた。
「だったら、私を拾わないでください。ご記憶にないでしょうが、そのご依頼、もう三回目なんです」
<評> もし、これまでの人生をやり直せるとしたら、あなたは、どの時点へ戻ることを願うでしょう? そんな究極の問いかけを含んだ作品。結局、問いと願いは、ぐるぐる行ったり来たりを繰り返すのかも?
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