「寄り添うため学ぶ」避難民受け入れ自治体やNPOへウクライナ語講座始まる 東京外大

2022年4月25日 06時00分
 ロシアがウクライナに侵攻してから2カ月。戦火を逃れた人たちの避難生活が長期化する中、国内でウクライナ語を学ぶ動きが広がりつつある。東京外国語大(東京都府中市)は、避難民を受け入れる自治体などの担当者向けにウクライナ語のオンライン講座を開始。戦争で傷ついた人たちに寄り添おうと、独自にウクライナ人から学ぶ人もいる。

オンラインでウクライナ語を教える中沢名誉教授(左)=22日、東京都府中市の東京外語大で

 「『ありがとう』は『デャークユ』」。東京外大の会議室で22日、ウクライナ語の専門家、中沢英彦・同大名誉教授がパソコンの画面越しに語りかけた。避難民の受け入れや生活支援をする自治体、NPO法人、企業などの担当者ら72人が耳を傾けた。
 出入国在留管理庁によると、今月20日までにウクライナから避難民として入国したのは670人。受け入れ拡大や長期化も予想されるが、ウクライナ語を話せる日本人は少ない。このため、2000年度から選択科目でウクライナ語の授業をしている同大は、支援策として急きょオンライン講座を始めた。
 講座は、5月20日までに1時間半の授業を6回開く。23都道府県の63団体から申し込みがあった。初回は中沢名誉教授が、避難生活に必要とみられる「役所」「手続き」「病院」などの言葉をはじめ、あいさつ、文字の読み方などを説明した。

中沢名誉教授(手前)によるオンラインのウクライナ語講座=22日、東京都府中市の東京外語大で

 既に避難民を受け入れている自治体の受講者によると、ロシア語を話せる日本人が通訳として協力してくれるため、意思疎通に困ったことはないという。だが、中沢名誉教授は「大半のウクライナ人はロシア語を話せるが、日本に避難した知人2人から『ロシア語は嫌だ』と打ち明けられた。避難民は便宜的に使っていても、内心は嫌なのではないか」と推し量る。
 この日の講座終了後、34人を受け入れている愛知県の担当者は「日々変わる状況やニーズを把握し、と話した。
 同大は27日から、ウクライナ支援のボランティアを希望する同大の学生向けに、中沢名誉教授による同様の講座を開く予定。これまでに80人以上の申し込みがあったという。(宮本隆康)

◆「言葉に興味を持つと、心を寄せられるのでは」

 東京都板橋区の会社員野口達也さん(47)はウクライナ語のオンラインレッスンを、ポーランドに避難中のウクライナ人女性から受けている。「相手の国の言葉に興味を持つと、相手に心を寄せられるんじゃないか」。そんな思いを抱いているという。
 きっかけは、旧ソ連の国々とビジネス交流を手掛ける妻の久美子さん(47)の取り組みだった。日本語ができるウクライナ人と有料で契約、日本人向けのレッスンをスタート。「避難先で苦労している人に仕事を提供したい」という妻の思いに、野口さんも共鳴、3月から学んでいる。
 野口さんの先生は、首都キーウ(キエフ)出身でポーランドに避難している40代の女性。週1回、日本時間の夕方に1時間、オンラインで言葉を教えてもらう。もともと言葉を学ぶのが好きで、英語やイタリア語、ロシア語などを話せるが、ウクライナ語には独特な魅力を感じている。
 ウクライナ語はロシア語と同じスラブ語で、より古い時代の言葉の特徴を残しているともいわれる。「言葉の発展が垣間見える。歴史を感じられる面白さがある」
 戦争で深く傷ついているだろう先生の胸の内を思いやり、注意深く言葉を選ぶこともある。「レッスンの間だけでも気持ちが紛れるように」。新たな言葉を学ぶ楽しさの中に、そっと寄り添う気持ちを込めている。(佐藤航)
 
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