米国でも最終処分地が決まらず、行き場のない核のごみ 「負の遺産」を抱え続ける観光の街

2022年4月25日 12時00分

米東部メーン州で、64個の乾式キャスクは屋外で厚さ約1メートルのコンクリートパットの上に置かれている=メーン・ヤンキー社提供

 全米の各原発では、高レベル核廃棄物である使用済み核燃料の処分地が見つからず、敷地内にたまり続けている。観光地がある東部メーン州でも、運転停止から26年になる廃炉原発の敷地の屋外に、行き場のない核ごみが、たなざらしとなっている。処分先のめどは立たず、街は「負の遺産」を抱え続けざるを得ない状況だ。(メーン州ウィスカセットで、金杉貴雄)
 巨大なコンクリートの円柱が並んでいるのが、500メートルほど離れた公道から見えた。高さ5.5メートル、重さは約150トン。高レベル核廃棄物のための「乾式キャスク」と呼ばれる容器64個が、厚さ約1メートルのコンクリートパッドの上に置かれている。中には計1400本の使用済み核燃料棒などが封印されている。

使用済み核燃料棒などが封印されたコンクリート製の乾式キャスク=米東部メーン州で(金杉貴雄撮影)

 メーン州にある人口3700人ほどの街ウィスカセット。「州で最も美しい」とも言われる風光明媚めいびな土地で、主要産業は観光業。夏は避暑地としてにぎわう。そんな街の中心部からわずか5キロの場所に、原発の高レベル廃棄物がずっと取り残されている。
 「敷地には入らないでください。写真はこの道路からだけです」。管理する原発会社メーン・ヤンキー社の広報担当エリック・ハウズさんが警告した。「警備については言えない」と説明を拒むが、地元紙によると、自動小銃などを持つ武装警備員が24時間体制で警護する物々しさだ。
 このメーン・ヤンキー原発は1972年に稼働したが、7年後のスリーマイル島原発事故をきっかけに反対運動が起きた。10年で3度の州民投票はいずれも否決されたが、その後、米原子力規制委員会(NRC)の査察で多数の欠陥を指摘され96年に運転停止。そのまま廃炉が決定した。
 廃炉作業は2005年に完了したものの、高レベル核廃棄物の使用済み核燃料は行き場がなく、会社は今、核ごみの管理のためだけに存続している。運転停止の3年前に入社したハウズさんは「これほど長期になるとは思わなかった」と漏らした。

◆最終処分場の選定地は地元が反対

 米国では、1982年の核廃棄物政策法で最終処分の責任は連邦政府にあるとし、98年までの処分開始を約束。だが、最終処分場に選定した西部ネバダ州ユッカマウンテンは地元の反対で頓挫、約束はいまだに果たされていない。このため、全米33州の停止済みを含む75の原発に約9万トンの使用済み核燃料が留め置かれ、毎年増え続けている。
 最終処分場のめどが立たない中、全米の使用済み核燃料を集め中間貯蔵する民間施設建設案が南部テキサス州と西部ニューメキシコ州の2カ所で浮上。だが、両州とも知事や議会などが反発し、やはり厳しい。
 メーン・ヤンキー原発は稼働中、街の固定資産税の9割を占め、住民の税金は周辺の10〜20分の1だったという。今は恩恵が消えた代わりに、放射能が減衰するまで10万年の高レベルの核ごみが事実上無期限に留め置かれているだけだ。

廃炉済み原発敷地内に使用済み核燃料が置かれ続けていることに懸念を示すレイモンド・シャディスさん=メーン州ウィスカセットで(金杉貴雄撮影)

 原発から3キロに農場があり、かつて反対運動に携わったレイモンド・シャディスさん(80)は「原発が停止しても安心感はなかった。核燃料が残ったままだったからだ」と険しい表情で語る。特にテロの脅威やキャスクの安全性に懸念を示し「子や孫の世代が見続けなければいけないのか」と不安を募らせる。
 住民らで作る「メーン・ヤンキー地域諮問委員会」のドン・ハドソンさん(71)は「核燃料がある限り、原発跡地は再開発ができない」と嘆く。安全性については当面不安はないとしつつ「100年かかるなら海面上昇などの気候変動の影響を受けるかもしれないし、永久に続く人工物もない」と早期の解決を希望する。長期化すれば、会社では後継者問題も発生する。
 デニス・シモンズ町長(57)は悲観的だ。「核廃棄物を抱えている少数の地域より、これから持ち込まれることに反対する人の方がはるかに多い。核のごみは私が生きている間はどこにも行かないだろう」

関連キーワード


おすすめ情報

国際の新着

記事一覧