ガソリン補助5円→25円→35円 激変緩和のはずが値下げ政策に 6兆2000億円の物価対策 出口見えず…

2022年4月27日 06時00分
 政府が26日公表した物価対策で最多の1兆5000億円を投じるのが、ガソリン価格を抑える補助金の拡充だ。「激変緩和」が当初の目的だったが、価格目標の引き下げと期間延長で事実上の値下げ政策に。需要と供給で決まる市場に、国が介入する異例の措置は出口の見えない状況に陥っている。(岸本拓也)
 補助金は1月27日に始まった。当初は1リットル当たり最大5円を石油元売り各社に支給し、3月10日からは25円に引き上げた。その結果、全国のガソリン価格は1リットル当たり172円程度を維持している。
 今回の拡充で補助金を35円に増やし、価格目標を172円から168円へ引き下げる。期間も4月末から9月末に延長する。
 ただ、恩恵には格差がある。総務省家計調査では、ガソリンへの年間支出額が最多の山口市(約9万1000円)と最少の東京都区部(約1万9600円)では、4倍以上の開きがある。原油高で値上がりする電気代などはほとんど支援されず、電力・ガスの業界関係者は「不公平だ」と漏らす。
 政府の価格介入は、市場機能をゆがめるとの批判も根強い。25日の経産省審議会では「激変緩和のはずが価格維持政策になっている。出口設定が必要だ」(京大大学院の中西寛教授)などの指摘が相次いだ。
 政府の当初案では、7月以降に価格目標を引き上げて補助を段階的に縮小する考えだったが、最終的に「一定期間後に見直しを検討する」と表現は後退。今後も原油価格の高騰が続けば、補助金から抜け出せなくなる可能性もある。ガソリン車の利用を助長する補助金は、政府の脱炭素目標とも矛盾しかねない。
 石油流通に詳しい桃山学院大の小嶌正稔教授は「原油が高止まりする中、補助金が膨らむ悪循環に陥っている。市場原理を働かせ、エネルギー源の多様化や省エネ、脱炭素をどうするのかなど、今後を見据えた議論が必要だ」と指摘した。

◆国会審議経ずに予備費1兆5000億円、使途も拡大

 物価対策には、国会審議を経ずに政府が使途を決められる予備費から1兆5000億円が充てられる。それに伴い、5月中にまとめる2022年度補正予算案で、政府は今回の使用分と同額を計上することで補填する考え。5兆5000億円の巨額予備費が維持されるほか、その大部分では使途も広がる。予算執行での政府の裁量は大きくなり、国会軽視の姿勢が強まった形だ。(坂田奈央)

記者会見する岸田首相=26日、首相官邸で(代表撮影)

 「新型コロナと原油価格・物価高騰対策に使途を限定した。丁寧に説明したい」。岸田首相は26日の会見で、予備費について理解を求めた。これから国会に提出する補正予算案で予備費を穴埋めするほか、コロナ対策に使途を限定していた5兆円分では物価高対策にも使えるようにする。
 コロナ禍以前の予備費は毎年3500億~5000億円程度で推移。それが、20年6月に成立した同年度第2次補正予算で「コロナ予備費」が新たに設けられ、一気に約10兆円の増額となった。その後は減少したものの、政府の裁量で使えるお金は依然、巨額だ。
 巨額予備費の必要性の理由として不測の事態を挙げるのは、岸田政権も安倍・菅政権と同様だ。だが、法政大学の小黒一正教授は新型コロナに比べれば、今回の物価高は先行きが見通しやすいと指摘。「そのための補正予算を編成して国会で堂々と議論するべきだ」と話している。

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