熱海土石流 「生命の危険、市は認識なく」 盛り土崩落 市、職員に聞き取り

2022年4月27日 08時02分

聞き取り調査の結果を公表する斉藤栄市長=熱海市役所で

 熱海市伊豆山(いずさん)の土石流災害で、市は二十六日、被害を拡大したとされる盛り土の造成時などに行政手続きに関わった市職員への聞き取り調査の結果を公表した。人命を奪うような災害につながる盛り土崩落の危険性を認識していなかったことや、県の関与不足を指摘する発言などが含まれている。市の対応への評価については、行政対応を検証する県の第三者委の最終報告後に公表する。(山中正義)
 聞き取りは、昨年十月に県や市が公開した当時の行政手続きに関する公文書を基に、四月上旬までに元職員を含む十七人に実施。結果は今月二十日、県の第三者委と市議会調査特別委員会(百条委員会)に提出した。
 盛り土崩落の危険性を巡っては市は二〇一〇年、盛り土を造成していた土地の前所有者に対し、土砂の搬入中止などを要請。その際に送付した文書で「土砂崩壊が発生すると、逢初川(あいぞめがわ)水域の住民の生命と財産に危険を及ぼす可能性がある」と明記していた。
 しかし、今回の調査結果によると、この文言は「県からのアドバイスを参考にした。指導に従わない事業者の行動変容を促すにはこの程度の強力な文言が必要と考え、使用した」とされている。その上で、「『住民の生命と財産に危険を及ぼす可能性がある』との認識を市が有していたわけではない」と続けている。
 その後も、「表土が崩れて川に流れることはあっても、人身災害につながるような崩落事故が起こるとは全く予想できなかった」など、危険性の認識が不十分だったとする文言が散見される。
 また、〇九年以降に土砂の本格的な搬入が進み、森林法に基づく林地開発許可違反の可能性が高まった際、市は対応について県と情報を共有した。しかし、聞き取りでは、「速やかに動いていただけなかった」「何度も問題意識については県には伝えていたが、結論がずっと先送りされていた印象」など県の対応に対する不満がにじんでいる。
 斉藤栄市長は、調査結果を踏まえた当時の市の対応への見解について「県の第三者委の最終報告を踏まえてから話す」と述べるにとどめた。
 調査結果は市ホームページで公開している。

◆熱海市職員への聞き取り調査結果の主な内容

▽大規模開発を念頭においており、土地改変面積が1ha未満の場合にのみ権限を有する市が主体となって事業者の開発行為に行政上のコントロールを加えることには無理があったと思っている。
▽(県土採取等規制条例に基づく届け出の)未記載事項について、必要な内容については、申請図面による確認や現場状況・聞き取りにより審査を行っていた。
▽盛土量については、提出の図面に基づき、土量の確認を行う中で、断面図と地形との間に齟齬(そご)があり、3.6万立方メートルもの盛土を行うことはできず、半分も入らないと考えていた。
▽進入路より上から来る水のほとんどがほかの沢に流れることを確認していたので、盛土部に流入する流域はほとんど無いと考え、排水施設が無い状態で受理を認めることとした。
▽(県の)問題解決に直結するような関与はなかった。そして、人事異動などを契機として関係性が薄くなっていった印象がある。

関連キーワード


おすすめ情報