「国際卓越研究大学」に教職員1700人反対署名 研究者ら「大学の自治壊される」「研究費支給に政治関与の恐れ」

2022年4月28日 19時18分

政府が複数の大学を「国際卓越研究大学」に認定し、投資信託の運用益で支援する法案の廃案を求める署名を文科省の担当者(手前)に手渡した大学教員ら=27日、東京・霞が関で

 世界最高水準の研究成果が期待できる大学を「国際卓越研究大学」に認定し、研究費を支給する政府の新制度を巡り、研究者から「学問の自由や大学の自治を脅かすのでは」という懸念の声が出ている。新制度導入を盛り込んだ法案は衆院本会議で28日、可決された。一方、制度に反対する筑波大の吉原ゆかり教授らは採決に先立つ27日、教職員ら1703人から集めた署名を文部科学省に提出した。

◆公的資金10兆円運用、1校に年間100億円分配へ

 文科省によると、新制度では財政投融資をはじめとする公的資金10兆円を「大学ファンド」として科学技術振興機構(JST)が運用。利益を「国際卓越研究大学」に認定された大学に2024年度から分配する。
 ファンドの運用は今年3月までに5.1兆円を原資に始まり、本年度内に10兆円の投資を完了。文科省は5年以内に年3000億円の運用益を期待する。認定大学は数校に絞り、1校当たり年間数100億円の分配を見込む。
 認定には「産学連携や寄付などで、年3%の事業成長」「重要事項を決定するための、学外者が多数を占める合議体の設置」などの条件がある。選考には、首相が議長を務め、閣僚や企業幹部、学者らでつくる「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」の意見も反映される。

◆「研究に政財界関与すれば利権の温床に」

明治学院大の石原俊教授(本人提供)

 27日に署名提出した研究者らは、この認定条件などを問題視する。明治学院大の石原俊教授は、取材に「合議体に大きな権限を持たせるなら、教職員や学生の意見が運営に反映されず、大学の自治が壊される。CSTIが選考に絡むなら、研究への政財界の関与が著しく進み、利権の温床になる恐れもある」と指摘する。

静岡大の鳥畑与一教授(本人提供)

 また、静岡大の鳥畑与一教授は大学に事業成長を求める姿勢について「研究は短期的には収入増に結びつかず、事業性がないものが大半だ。数値目標を押しつけるガバナンス強化は、本来の『研究力強化』とは真逆の結果が出るのでは」と疑問を投げかける。

◆反対のオンライン署名も1万3000人超

 教職員らを対象にした署名は4月1日に開始。市民や学生向けのオンライン署名は同22日に始め、約1万3000人分が集まった。
 文科省の担当者は「大学経営のかじ取りやチェックは、研究者には難しい面もある。認定に当たってもCSTIだけでなく、研究者の意見も聴いて審査する。専門外の政治家のみの判断では決まらない」と説明している。(望月衣塑子)
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