最期の声 ドキュメント災害関連死 山川徹著

2022年5月1日 07時00分

◆見えない悲劇の実態追う
[評]いとうせいこう(作家)

 「大災害を生き延びたにもかかわらず、避難生活の影響で持病が悪化して死期を早めたり、大切な人を亡くした喪失感から心身に不調をきたし、自ら命を絶つ人もいる」
 そうした悲劇が「災害関連死」と呼ばれることを、著者はまずはじめに教えてくれる。私自身、何年もかけて東北を回っているが、この「災害関連死」という言葉を時に耳にすることがある。
 災害のために持病の治療に空白が生じる。家族が災害のために死の淵をさまよい、そのケアで体も心も疲弊する。そうした“被害”で亡くなった人々は決して少なくない。
 だが、直接的な被害の数々を前に、「災害関連死」当事者はどこかで遠慮をし、おかげで実態が正確につかみきれていないし、そのためいまだに苦しみが続くことがある。
 著者は二〇〇四年の新潟県中越地震をきっかけに、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災、そして熊本地震の被災地をめぐり、この「災害関連死」がまず法的にどう取り扱われてきたか、そもそも災害法はどう進展してきたかの歴史を解き明かす。
 そして被害者やその家族たちがいまもって市町村の窓口で「災害関連死」の認定をしてもらいにくい現状、未来の災害を防ぐためにあえて訴えを続ける人々の勇気、地方政治家の地道な粘りなどを具体的な事例をもって示す。
 そこには知らなかった事実があまりに多くあり、例えば「阪神・淡路大震災以前は、直接死の遺族にしか災害弔慰金が支払われていなかった。災害関連死という概念がなかったのである」などなど。
 実はこの本ではまだ取り上げられていないが(今後必ず著者は書くだろう)、同じく阪神・淡路大震災を経て、今になってやっと「災害での身障者」の問題も出てきている。災害で障碍(しょうがい)を得てしまった方々が、まだ表だって補償を受けていない。私が話を聞こうにも、どうしてもやっかみを恐れられてしまう。これは日本社会全体の問題だ。
 「災害関連死」とその支援を追求した著者が掘り起こした事実の深さを思う。
(KADOKAWA・1870円)
1977年生まれ。ノンフィクションライター。著書『国境を越えたスクラム』など。

◆もう1冊

東北学院大学編『震災学』(東北学院大学)。年刊の総合学術誌。最新第16号で災害関連死や災害報道などを特集。

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