若者狙うマルチの闇 350万借金背負った体験者が明かす手口 「何が好き?情報送るよ」駅や街コンで連絡先聞き出し…

2022年5月2日 06時00分

若い女性に声を掛ける男女2人組=品川駅構内で(一部画像処理)

 若者を標的にした「マルチ商法」が横行している。近年は駅頭などで声を掛けて誘い込んだ後、高額な美容用品などを購入させる手法が目立ち、その背後には特定組織の存在がちらつく。未成年は親の同意なく結んだ契約は取り消せるが、4月から成人年齢が18歳に引き下げられ、専門家は被害拡大を警戒する。(佐藤大、写真も)

◆10人に1人は連絡先交換

 4月中旬、夕刻の品川駅構内。20代くらいの男女2人組が、若い女性に次々と声を掛けていた。「…で伺っていまして」と言っているようだが、遠くてよく聞こえない。足を止める人も多く、10人に1人はLINE(ライン)で連絡先を交換していた。
 4日後の夕刻、再び品川駅を訪れると、違う男女2人組が偶然、記者の目の前で若い女性に声を掛けた。「企画で伺っていまして。最近ハマっているものは?」。女性が「宝塚が好き」と答えると、2人組は「宝塚の情報をお送りしますよ」と連絡先の交換を求め、「宗教やビジネスでは一切ありませんので」と付け加えた。
 記者が2人組に「何の声掛けですか」と問い掛けると、「分かんないでーす」。駅頭などで無差別に若者らに連絡先を聞く手法は、「マルチ商法まがいの活動をしている」と疑われているある組織の特徴と酷似する。組織を巡ってはネット上でも被害情報が飛び交う。記者が2人組に組織名をぶつけると、「関係ないです」と言い、立ち去った。

◆街コン→フットサル→セミナーから沼

 組織に所属していたという東京都内の30代男性が取材に応じてくれた。

「マルチ商法」の被害について説明する30代男性=東京都内で

 地方から上京した男性は2016年、男女に出会いの場を提供する「街コン」に参加。同年代の女性と知り合い、連絡先を交換した。フットサルのイベントで親交を深めた後、セミナーに出席。「師匠」と呼ばれる男性から、誰かを入会させると紹介料を得ることができると説明を受けた。
 そして求められたのが、15万円の美容用品セットの購入。同じセットを毎月のように買わされ、消費者金融などからの借金は約350万円に。「おかしいと思いながらも、集団圧力もあって払い続けてしまった」と悔やむ。

◆マルチ絡み相談8500件の4割超は20代

 男性は昨年夏、黙ってグループを抜けた。男性によると、組織のメンバーは全国に数千人いて、今も各地の駅や街コン、マッチングアプリで若者を誘い込んでいる可能性が高いという。男性は「成人になったばかりの18歳や就職したての若者は、特に狙われやすいので心配だ」と案じた。
 組織の幹部とされる人物は、本紙の取材に「私が直接関係している組織ではなく、その勧誘等の手法に関与はしていませんので、分かりかねます」とメールで回答した。
 国民生活センターによると、マルチ商法絡みの相談は21年度に約8500件あり、うち4割以上を20代が占める。消費者問題に詳しい悪徳商法被害者対策委員会の堺次夫会長は「マルチ商法が怖いのは、被害者が被害意識を持たないまま加害者になってしまうこと。成人年齢引き下げで、被害が一気に増えかねない」と警鐘を鳴らしている。

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