緊急事態条項の創設是非で論争激化 人権制限につながる恐れも 衆参憲法審

2022年5月3日 06時00分
 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、自民党など改憲派は憲法に「緊急事態条項」を創設する必要性をこれまで以上に強調している。衆参の憲法審査会で意見を集約したい考えだが、野党第1党の立憲民主党は現行憲法で対応できるとして反対。緊急事態での国会議員の任期延長や緊急政令の是非など、多岐にわたる議論が続いている。(佐藤裕介)
 「緊急事態に関する憲法審としての考え方をとりまとめていきたい」。4月7日の衆院憲法審後、与党筆頭幹事を務める自民の新藤義孝氏は突然、記者団にこう語った。
 自民はウクライナ侵攻を機に、衆院憲法審で緊急事態条項創設の必要性に加え、議論の加速化も強調し始めた。党の改憲4項目の条文イメージに盛り込んだ大規模な自然災害時に加え「有事やテロ、感染症も対象にすべきだ」との声も上がる。ただ、緊急事態の定義は定かではない。
 論点の1つは、緊急事態が発生した時に、国会議員の任期を延長するかどうかだ。憲法は国会議員の任期を定めている。選挙ができないほどの大規模災害などが発生して任期満了になると、国会議員が不在になりかねない。自民は国会の機能を維持するため、任期延長の規定を書き込むよう主張。公明党に加え、野党の日本維新の会、国民民主党も前向きな考えだ。
 これに対し、立民は任期満了時に衆参の選挙ができなくても、3年ごとに半数改選される参院では半分の議員が残り、憲法に定められている参院の緊急集会などで対応可能だと主張。改憲は不要だとしている。

◆政府の権限集中 自民「盛り込むべき」 立民「立憲主義に反する」

 さらに対立が深まるのは、政府の権限集中と私権制限を認めるかどうかだ。自民党はいずれも憲法に盛り込み、内閣が緊急時に国会の関与なく法律に相当する「緊急政令」も制定できるようにするべきだと主張している。
 一方、衆院憲法審で立民の奥野総一郎氏は、ナチスドイツのヒトラーが緊急事態条項を乱用して独裁政権を樹立した経緯に言及し、「強権的な緊急事態条項は立憲主義に反する」と指摘。緊急政令は人権の制限にもつながりかねず「憲法の改正限界を超える」と批判した。
 自民は維新、国民民主の協力を得て合意を急ぎたい考え。ただ、憲法担当相として1947年の施行まで憲法制定に深く関わった金森徳次郎氏は「緊急勅令は国民意思を無視できる制度といえる」として、緊急事態条項を盛り込まなかった理由を説明した。立民は「改憲ありきの憲法審の運営に異を唱えていきたい」(小西洋之参院議員)と反対している。

関連キーワード


おすすめ情報

政治の新着

記事一覧