爆撃で街壊滅「もう住めない」 マリウポリに戻った男性 脱出拒む母、家族はばらばらに

2022年5月2日 20時41分
 ロシア軍の包囲する製鉄所から民間人の退避が始まった、ウクライナ南東部の激戦地マリウポリ。3月中旬に市を脱出した通訳業アルトゥールさん(55)は4月27日、街に残った母(80)を連れ出すため、約40日ぶりに故郷に戻った。戦闘は終息していたが、街の壊滅具合は想像を超え、電話取材に「全てが終わった。この街に人は住めない」と話した。(カイロ・蜘手美鶴)

ウクライナ南東部マリウポリで、爆撃で壊れたアルトゥールさんの母のアパート=アルトゥールさん提供

 「戦闘が終われば、街に戻って暮らせると思っていた。でも、それは無理だと分かった」。アルトゥールさんが29日、消え入るような声で話した。建物の多くがほぼ全壊し、目抜き通りは辛うじて車で走れるものの、脇道はがれきでふさがれているという。

ウクライナ南東部マリウポリで4月27日、壊れた自宅アパート前に座るアルトゥールさんの母(左)=アルトゥールさん提供

 母はアルトゥールさんが到着した時、隣人の女性と一緒にアパート前のイスに座っていた。約50メートル先で爆弾が爆発したといい、アパートは半壊。女性の夫は23日に死亡し、埋葬が間に合わないため、遺体は室内に横たえてあった。
 爆撃を生き延びた住民の間には強い一体感が生まれ、支え合って暮らしているという。アルトゥールさんの母は、「みんなと残る」と脱出を拒んだ。「母はここで生まれ育って結婚し、人生の全てがこの街にある。無理に連れ帰ることはできなかった」と話す。
 アルトゥールさん自身は現在、2014年にロシアが併合したクリミア半島に、ロシア人の妻とともに避難している。戦闘が終わり次第マリウポリに帰るつもりだったが、今回街を訪れて諦めがついたという。「再建には何年も何年もかかるだろう。戻れると思っていた自分が甘かった」
 今後はクリミア半島で暮らすつもりだが、長男(22)はロシアを拒絶し、ジョージア(旧グルジア)を経由してドイツに逃れた。「戦争で家族はばらばらになった。誰でもいいから、一刻も早く戦争を終わらせてくれ」と訴えた。

おすすめ情報

国際の新着

記事一覧