「土地利用規制法」 9月に全面施行 住民運動、萎縮の危険性も きょう憲法記念日 尾池弁護士に問題点を聞く

2022年5月3日 07時39分

今年9月に全面施行される土地利用規制法について解説する尾池誠司弁護士=かすみがうら市で

 「土地利用規制法」が今年九月に全面施行され、自衛隊基地や原子力施設周辺での土地利用の規制が本格的に始まる。ただ、法の規定にはあいまいな部分が多く、「財産権、プライバシー、思想・良心の自由といった憲法上の権利を侵害しかねない」と危ぶむ声が上がっている。茨城県内にも該当する施設は複数ある。三日の憲法記念日に向け、県弁護士会所属の尾池誠司弁護士にこの法律の問題点を聞いた。(聞き手・保坂千裕)
 −何のための法律か
 一部では立法事実(法律の必要性)がないと言われている。個人的には、内閣総理大臣に権限を与えているだけで、立法の名にも値しないと思っている。二〇一一年に、自民党の高市早苗衆院議員らが「中国資本に重要な土地を買われたら危ない」などと言って動きだしたとされる。だが、外国資本に対しては制限していない。国際的な貿易のルールに違反するからだ。結局、自国民を規制するだけの法律になった。
 −県内ではどの施設が対象となるか
 「自衛隊の施設」と明記されているので、航空自衛隊百里基地(小美玉市)や陸上自衛隊古河駐屯地(古河市)は該当する。さらに問題なのは生活関連施設。「国民生活に関連を有する施設で、機能が阻害された場合に国民の生命に重大な被害が生じるおそれがある」と定めており、日本原子力発電東海第二原発(東海村)は入るだろう。だが、それにとどまらない。大きな工場や港、何でも対象になる可能性がある。
 −憲法に照らし合わせると何が問題か
 いろいろある。調査対象となる人は、憲法一三条で保障されるプライバシーを侵害されかねない。その調査対象は明記されていない。特定の宗教や政党に所属する人が対象になるなら、一九条の思想・良心の自由に反する。土地の利用制限や所有権移転などの事前届け出は、二九条の財産権を侵害する危険もある。
 −デモなど市民運動の障害になりうるか
 警察の公安や自衛隊の諜報(ちょうほう)部は以前から調査していたが、この法律はあえて「調査する」と明確に言っている。「それならやめようか」と正当な政治活動や住民運動まで萎縮させる危険性はあるだろう。何を目的にこの法律が作られたのかは分からないが、本音はおそらくスパイ行為の防止だろう。秘密主義の法律。戦前の内務省のような発想が少し復活したように感じられる。どう運用されるのか注視していきたい。

東海第二原発。手前には住宅地が広がる=東海村で、本社ヘリ「おおづる」から

<土地利用規制法> 自衛隊基地や原発など安全保障上重要な施設の周囲約1キロや国境離島を注視区域に指定し、土地などの利用状況の調査や、妨害行為への中止勧告・命令を可能にする。特に重要な施設や離島は特別注視区域に指定し、土地売買に事前届け出を義務付ける。命令に従わなかったり、届け出を怠ったりした場合の刑事罰も定めている。

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