川千家【葛飾区】柴又帝釈天のお膝元、創業250年の暖簾を守るうなぎの老舗「川千家」 ~ぐるり東京 名品さんぽ~

2022年5月10日 09時30分

ぐるり東京 名品さんぽ


名の知れた定番商品から隠れた名品まで。東京のイチオシ商品をご紹介します。


柴又帝釈天のお膝元、創業250年の暖簾を守るうなぎの老舗「川千家」

 新店舗が次々と誕生しては消えていく、オールジャンルのグルメ激戦区、東京。そのなかで何世代にも渡ってお店を守り続け、客を魅了し続ける名品、名店がある。なぜ、それほどまでに人を惹きつけてやまないのか。その魅力を探る「名品さんぽ」の第2回では、柴又帝釈天の参道にある創業250年超のうなぎ・こい料理店「川千家かわちや」を訪ねた。

江戸時代からの信仰と映画のヒットで人気はうなぎ登り

 滋養に富んだ食べ物の代表格、うなぎ。土用の丑の日やお祝いの席など、特別な日の料理として食べられることが多く、そのうなぎ料理が人気の老舗が東京葛飾区の帝釈天参道沿いにある。創業安永7年(1778年)、江戸時代に開業したうなぎ・こい・川魚店「川千家」だ。
 タイムスリップしたようなお店が軒を連ねる参道の奥から4件目、川千家もまた風情ある佇まいで、その歴史と切っても切れないのが帝釈天だ。開山したのは 寛永6年(1629年)で、正しくは経営山題経寺という日蓮宗の寺院。 安永8年(1779年)に行方不明になっていた日蓮上人が刻んだご本尊が見つかると、その日が「庚申」の日だったことから60日に1回巡ってくる庚申の日に縁日が開かれた。さらに天明2年(1782年)から数年におよぶ天明の大飢饉の際に、当時の住職がご本尊を背負って江戸のまちを練り歩いて救済にあたったことから、庶民の味方として帝釈天は親しまれ、帝釈天参道は賑わうようになったという。

川千家10代目となる代表取締役 天宮久嘉さん

「ご本尊が見つかった頃は近隣農家の副業、それも奥さんが切り盛りするお店がほとんどだったそうです。川魚料理を出すお店はいくつかあって、うちもそのひとつ。5代目の時に参道沿いに移って現在に至りますが、今では参道の中でも一番古い店になりました」
 そう穏やかに語るのは35歳の時に10代目を継いだ代表取締役の天宮久嘉さんだ。そして、60日に一度の賑わいを一気に縮め、店の売上に多大な貢献をしたのが昭和44年(1969年)からスタートした映画『男はつらいよ』だったと振り返る。

華々しい歴史に人知れない苦労と努力あり

「子どもの頃から映画の撮影が日常にありました。『男はつらいよ』で満男役の吉岡秀隆さんと私が同じ歳という理由で、しばらく同じ場所に居させられたこともありましたね。何を話すでもなく、ただ一緒にいただけですが」と苦笑するが、川千家に映画の出演者やスタッフが訪れることも少なくなく、撮影や対談場所に指名されたり、著名人が来店したりと華々しい歴史を彩る。
 参拝客、地元客そして映画ファンに贔屓にされ、参拝のハレの日に奮発してうなぎを食べる人がいる限り店は安泰。そう思うかもしれないが、250年の長い歴史には紆余曲折があった。「柴又でうなぎ、こい、川魚といえば川千家」と言われるまでの繁盛店だが、昭和から平成にかけて始まるバブル崩壊では店の増改築費の返済に窮して倒産の危機にも陥ったという。
 それを機に、コース料理中心からうなぎをはじめとする単品料理中心に切り替え、人件費を含めて経費を徹底して見直し、平成23年(2011年)には観光バスの団体客受け入れをスタートした。コロナ禍ではテイクアウトや真空パックのうなぎの宅配なども実施。「老舗」「帝釈天」「寅さん」などの輝かしいワードに頼ることなく、時代に応じて創意工夫を重ねてきたからこそ今がある。

流行りに左右されず創業当初から変わらぬ味を守る

 一方で創業当初から変わらないのが料理の美味しさだ。一番人気は今も昔も変わらずうなぎ料理。うな重と蒲焼が店の二大看板で、続いてこい料理、川魚料理が続く。うなぎは国産でも生産量の多い九州産を使用し、熟練の職人が手間暇かけて調理。自慢の自家製タレの調合は創業当時のままの秘伝だ。

うな重は肝吸いと漬物付きで、梅(3500円)、竹(4200円)、松(5300円)があり、竹が人気(写真は、梅)

「最近は甘塩っぱいタレが主流のようですが、うちはどちらかといえば醤油の風味が立った辛めです。毎日かけ足してタレを作っていて、日本酒を効かせているのが特徴です。それ以上はお伝えできませんけどね」と笑う。うな重と蒲焼のメニューはどちらも松竹梅とうなぎの大きさ別に3タイプを用意。備長炭を使って丁寧に仕上げたうなぎは程よい食感とさっぱりした風味が食べるほどに食欲をそそり、口の中でふわっと溶けるうなぎよりも、「食べた」という充足感に満たされる。
「うなぎ料理とは真逆の味付けを特徴としているのが、こい料理。こいの味噌煮込み料理である鯉こくは、甘くてとろっとした艶やかな一品です。臭みは全くないのですが、こい料理を食べ慣れない人が増えてきているので、今後はこい料理に力を入れて巻き返しを図りたいところです」

帝釈天参拝の前後に江戸川沿い散策が楽しい

 映画が終わっても寅さん人気は今も絶大で、寅さんに扮した芸人が参道沿いのお店に立ち寄っては客に声をかけるという地域のおもてなし演出があり、川千家にも時折“寅さん”が立ち寄るという。

店内には、座敷席とテーブル席がある

「お客様は60代のご夫婦が中心なので、本物そっくりの寅さんに驚いたり、喜んでくださったりして店も活気づきますね。でも、若い世代にはきょとんとされることも増えてきました」と天宮さん。帝釈天の参拝だけではなく、帝釈天の北東を流れる江戸川沿いまで足を延ばせば、今年4月にリニューアルオープンした「葛飾柴又寅さん記念館」があり、寅さんを知らない世代にもおすすめしたいと語る。
 記念館には「山田洋次ミュージアム」も併設されており、徒歩圏内には和洋折衷の建物がモダンな「山本亭」、都内唯一の船の渡し場であり、演歌歌手の細川たかしさんのヒット曲で話題になった「矢切の渡し」もある。
 さらに、細川たかしさんの愛弟子の彩青りゅうせいさんが、今年4月に柴又帝釈天参道商店街の特別PR大使に就任するなど、帝釈天参道を中心に下町情緒あふれる柴又は街ぐるみで、今、新しい風が吹いているようだ。

<今回の取材先>

川千家
安永7年(1778年)創業。柴又でうなぎ、こい、川魚といえば川千家といわれる老舗で、中庭を有した敷地は帝釈天参道沿いの1階食堂(席数約120人分)、コース料を楽しむ2、3階お座敷(大小14部屋最大100人分)など総席数406席を数える。完全バリアフリーで授乳室も完備。当日来店のほか法事や宴会など幅広い用途で親しまれている。
<データ>
住所 東京都葛飾区柴又7-6-16
電話 03-3657-4151
営業時間  11:00〜18:00(LO 17:30)
定休日  8月第1週の平日(1日〜4日)は休み。
    12月28日~31日
川千家公式サイト https://www.kawachiya.biz
※新型コロナウィルス感染症の影響で、掲載したお店や施設の臨時休業および、営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。
※2022年5月10日時点での情報です。
※料金は原則的に税込み金額表示です。

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