岸田首相 緊急事態条項新設や9条改正の「早期実現を」 改憲派集会にビデオメッセージ

2022年5月3日 20時20分
 日本国憲法施行から75年を迎えた憲法記念日の3日、各地で集会が開かれた。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、改憲派は「今のままでは国は守れない」と9条改正を主張し、岸田文雄首相(自民党総裁)はビデオメッセージで「(改憲に)挑戦し続けなければならない」と述べた。護憲派は「危機に乗じた改憲論議」と危機感を強めた。
 改憲派の民間団体は東京都内で集会を開催。首相はメッセージで、緊急事態条項新設や9条への自衛隊明記を盛り込んだ党改憲4項目について「いずれも極めて現代的な課題であり、早期の実現が求められる」と述べた。

改憲派による集会「公開憲法フォーラム」で流された岸田首相のビデオメッセージ=東京都千代田区の砂防会館別館

 特に緊急事態条項については、ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルス禍を挙げ「緊急事態への備えに対する関心が高まっている。大地震などの緊急時に、国会機能をいかに維持するのか。国家や国民はどのような役割を果たしていくべきなのか」と問いかけた上で、「迅速な対応を確保するため、憲法にどのように位置付けるかは、極めて重要な課題だ。真剣に議論を深めなければならない」と訴えた。
 首相が言及した国民の役割とは、緊急事態が発生した際に、国民の権利を制限する私権制限が念頭にあるとみられる。
 首相は、憲法施行から75年を迎えたことに「時代にそぐわない部分、不足している部分は改正すべきではないか」と指摘。自衛隊については「大規模災害やコロナに懸命に対応しているにもかかわらず、違憲とする声がある」として、9条への明記が必要だとした。
 政府・自民党内にはウクライナ侵攻を前面に出して、緊急事態への備えを万全にする必要があると訴え続ければ、改憲に向けた世論の理解が得やすくなる、との読みがある。首相の発言は、改憲の機運を高めるのが狙いだ。
 緊急事態条項を巡っては、衆参の憲法審査会で、自民党など改憲派が創設の必要性を強調。大規模な自然災害などが発生した時に、衆院選と重なると、衆院議員が不在になりかねないとして、国会議員の任期延長を認めるよう要求。立憲民主党は参院では半分の議員が残り、参院の緊急集会で対応できるため、改憲は不要としている。さらに、政府への権限集中と国民の私権制限を巡り、立憲民主党は「人権への過剰な制約は憲法の改正限界を超える」と反発している。
 歴代首相は憲法記念日に改憲派の集会にメッセージを寄せてきた。
 2017年には当時の安倍晋三首相が「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。憲法改正の発議は国会の役割にもかかわらず、改憲論議を主導しようとする安倍首相の姿勢に立民などが強く反発した経緯がある。(佐藤裕介)

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