アメリカ最高裁、中絶の権利認める50年前の判例を変更か 政治サイトが「草案」リーク

2022年5月3日 20時33分
3日未明、ワシントンの米連邦最高裁の外で抗議する人たち=AP

3日未明、ワシントンの米連邦最高裁の外で抗議する人たち=AP

 【ワシントン=吉田通夫】米連邦最高裁が、人工妊娠中絶の権利を憲法が認めているとした1973年の判例を覆す可能性が高まっていることが2日わかった。米政治サイト「ポリティコ」が判断の草案を入手したとして公開し、過半数の判事が支持していると報じた。米国では、中絶は女性の権利だとする民主党と反対する共和党が激しく対立しており、草案通りの判決が出れば、社会の分断がさらに深まるのは必至だ。
 最高裁の判断の草案が流出するのは異例で、政治的な思惑も透けるため、司法の信頼性が揺らぐ事態に発展する可能性もある。
 73年の判決は、胎児が子宮外で育成可能になるまでの中絶を合憲と認めた。一般的に、妊娠から24週ごろまでとされる。しかし、南部ミシシッピ州は妊娠から15週を過ぎた中絶を原則禁止としたため合憲性が争われ、最高裁も昨年12月から審理を始めた。
 今回流出したのは、同裁判の判決理由を示す「法廷意見書」の「第一草案」98ページ。73年の判断を「国家の歴史と伝統に深く根差していない」として「覆す必要がある」と明記。覆れば国家の統一基準はなくなり、各州の判断に委ねられるためミシシッピ州法は合憲となる見込み。
 米国では民主党政権が選んだ判事か共和党かで司法判断が異なることも多く、政治的に対立する裁判では人数構成が注目される。最高裁は判事9人のうち共和党系が6人で、圧倒的多数。今回の草案も共和党系のアリート判事が作成し、ポリティコによると、ほかに少なくとも共和党系4人が賛成しているという。
 草案が報じられた2日夜、最高裁周辺には抗議する市民と支持する市民が集まり、対立した。
 民主党のペロシ連邦議会下院議長とシューマー上院院内総務は「何千万人もの女性が、身体の自由と、半世紀にわたって頼ってきた憲法上の権利を奪われる」と非難する共同声明を発表。共和党のコットン上院議員はツイッターで歓迎しつつ「最高裁と司法省は、あらゆる調査手段を使ってリークの真相を究明しなければならない」と強調した。

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