団地見守る「縁側」交流 八王子市・館ケ丘自治会の挑戦

2022年5月5日 07時07分

自転車を改造した「団地タクシー」。前が客席で屋根も付いている=東京都八王子市で

 コロナ禍で家にこもりがちになり、高齢者の孤立が心配される中、東京都八王子市の館ケ丘団地の自治会では、以前から孤立を防ぐ取り組みを進めてきた。自転車を改造した「団地タクシー」や気軽に立ち寄れる「団地の縁側」など、さまざまな工夫はコロナ禍でも孤立化防止に役立っている。 (宮本隆康)
 「利用者は三年前の二倍近くに増えたのではないでしょうか」。屋根や座席を取り付けた三輪の電動アシスト自転車を前に館ケ丘自治会副会長の宮崎昭さん(73)は人気ぶりを説明した。
 館ケ丘団地は一九七五年に入居開始。約二千四百戸に約三千人が暮らす。高齢化が進み、二〇一九年の時点で六十五歳以上が六割近くを占める。
 広大な敷地は二十九ヘクタールと東京ドーム六・二個分。丘陵地を造成したため坂道も多く、以前は移動中にベンチで休むお年寄りの姿が見られた。自治会に「買い物などの送迎をしてもらえるとありがたい」という声が寄せられた。
 そこで団地内で見守り活動などを行っている「ふらっと相談室館ケ丘」が一三年から団地タクシーの運行を開始。自治会が引き継いだ。スーパーや店舗、病院などが集まる団地の中心部と各戸の間を送迎する。悪天候などを除き、原則毎日午前十一時から午後三時まで。こぎ手は自治会メンバーや学生ボランティア、相談室のスタッフらが担う。

桜の木の下で開いた「オープンカフェ」(今年4月)

 「買い物帰りに荷物を持って歩かずに済む」などと好評で、昨年度は延べ二千六百七十四人が利用。維持管理費として百円以上の寄付をお願いしている。
 タクシー運行開始の翌一四年には、住民が気軽に立ち寄ったり集まったりするスペース「団地の縁側」を事務所内に開いた。コーヒーは無料。料理を持ち込んで食事もできる。
 室内には住民から寄せられた数百冊の本が並び、貸し出しもしている。寄贈されたピアノが置かれ、練習する住民も。昨年度は一日平均三十二人が「縁側」を訪れ、憩いの場になっている。

「団地の縁側」。左奥では住民がピアノを弾いている=東京都八王子市で

 「家にこもって孤立すれば孤独死につながる恐れがあり、実際に団地内でも起きている」と自治会長の高瀬智規さん(78)。「団地タクシーや団地の縁側で、住民同士が顔見知りになることは見守り活動にもなっている」と話す。
 「ちょこっと生活応援」と名付けた無料の生活支援も特徴だ。ゴミ出しや電球の交換、家具の移動、スマートフォンの操作補助などをメンバーらが交代で手伝う。孤立化を防いで健康を維持するため近くの里山歩きやウオーキング教室を企画。感染対策を講じながら外出の機会をつくるなど工夫を凝らす。

◆新たな取り組み「面白がる」

 自治会が発足したのは10年。それまで活動は活発ではなかったという。入居開始当時は地区ごとに4つの自治会があったが、都市再生機構(UR)が団地の管理をしていることもあり、うち2つはなくなった。残る2つも、今ほど多様な活動はしていなかった。
 しかし、高齢化が進み見守り活動が必要になった。行政やURとの交渉でも役立つため「自治会が必要」との声が上がり、団地全体の自治会がつくられた。
 宮崎さんは「住民から新しい取り組みを持ち掛けられても、基本的に断らないようにしています。『できるかな』と思うようなことも案外、何とかなる。義務感でやったら続かないけど、面白がってやれば楽しめる」と笑う。
 新型コロナウイルスのワクチン接種では「ネット予約のやり方が分からない」という高齢者のために予約サポート会を企画。つながりのある市内の拓殖大のゼミに協力を依頼し、自治会メンバーと学生らがオンライン予約を代行した。

ワクチン接種のオンライン予約代行会(同3月)=いずれも館ケ丘自治会提供

 増加傾向にあるものの自治会の加入者は約550人。役員は現在6人で、各種の活動を手伝うボランティアは40人近くいるが、高瀬さんは「もっと加入者もボランティアも増やし、近所の交流や助け合いを広げたい」と語る。

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